日本車勢も反攻の狼煙を上げるも存在感は今ひとつ?
8つのホールでプレス会見が20分刻みで同時進行するため、日本メーカーの会見はほとんど見られなかったのですが、トヨタはBYDとの合弁会社で開発したbZ3CやbZ3Xをお披露目したほか、中国IT大手のテンセントとAIやビッグデータ分野での提携を発表しました。ホンダは、昨年発表したe:Nシリーズに加え、烨P7・烨S7の烨(※1)シリーズを新たに発表、2027年までに6車種を発売する予定です。日産とマツダは、日本本社から内田社長、毛籠社長が登壇し、中国市場での販売台数の減少に歯止めをかけて反転攻勢に出るべく、日産は4車種のNEVコンセプトカーを、マツダは提携先の長安汽車とともにミッドサイズセダンのEVとプラグインモデルのEZ-6などを発表しました。※1:「明るく光り輝く」の意。
中国の政府系自動車メーカーの上海汽車、第一汽車、広州汽車、東風汽車、北京汽車、長城汽車なども人気のSUVタイプやミニバンなどの品揃えを披露し、吉利汽車は、Zeeker、Lynk & Co、Polester、Lotusなどを、上海汽車はMG、MAXUS、IM(智己)などの傘下のブランドに力を入れています。さらに独立系は、EV新興御三家のLi Auto(理想汽車)、NIO(尉来)、シャオペン(小鵬)などが徐々に生産台数を伸ばしており、ファーウェイ(華為)、シャオミ(小米)などの通信や携帯会社も参入。これに欧州のメルセデス、BMW、アウディ、VW、ジャガーランドローバー、ボルボ、ベントレーなどの欧州勢、ビュイック、キャデラック、シボレー、フォード、リンカーンなどのアメリカ勢、そして韓国や日本の自動車メーカーが渾然一体となって2500万台(輸出500万台を除く)の市場に溢れかえっている印象です。
今回のプレスデーも、スマホで会場からライブ配信するインフルエンサーが溢れかえっていて写真も撮りにくい状況ですが、中国の消費者はWeChatなどのSNSで流れてくる膨大な情報を咀嚼して、クルマの購入でもコストパフォーマンスを意識した賢い選択をするようです。これほど多くのブランドが割拠する状況は、ちょうど自動車が誕生した20世紀初頭の黎明期に似ているのでしょうか。全てのブランドが生き残るとは到底考えられないと現地のメディア関係者も言っていますが、いずれにしても、「普段の足は、燃料代もメンテナンス代も安いEVで十分」という関係者の話にあるように、新エネルギー車への転換は世界最速で進んでいくことは間違いなさそうです。(了)
●著者プロフィール
丸田 靖生(まるた やすお)1960年山口県生まれ。京都大学卒業後、東洋工業(現マツダ)入社。海外広報課、北米マツダ(デトロイト事務所)駐在をへて、1996年に日本ゼネラルモーターズに転じ、サターンやオペルの広報・マーケティングに携わる。2004年から2021年まで、フォルクスワーゲングループジャパン、アウディジャパンの広報責任者を歴任。現在、広報・コミュニケーションコンサルタントとして活動中。著書に「広報の極意−混迷の時代にこそ広報が活躍できる」(2022年 ヴイツーソリューション)がある。