日産の発表によると、2023年度の「サクラ」の販売台数は3万4083台となり、国内のEV販売台数でナンバーワンとなりました。これは2022年度に続く、2年連続の快挙となります。EVが売れないという言われる日本市場で、孤軍奮闘している日産サクラ、その人気の理由はどこにあるのでしょうか。

手頃な価格であることが支持を受ける第一の理由

日産のEVである「サクラ」が、なぜ売れているのかには、いくつかの理由が考えられます。

まずひとつ目の理由ですが、それは“価格の安さ”にあるでしょう。日本で販売されている乗用車のEVとして最も安価なのが、日産「サクラ」と、その兄弟車である三菱「eKクロスEV」です。

「サクラ」の価格は254万8700円から。「ekクロスEV」は254万6500円から。ほんのわずか三菱の「eKクロスEV」の方が安いのですが、ディーラー網の充実などの販売力の差から、「サクラ」がEV売り上げナンバーワンを獲得しています。「eKクロスEV」の2023年度の販売台数は4419台にとどまっています。

画像: 「日産サクラ」。軽自動車に求められることをEVでほぼすべて実現したと言えそう。

「日産サクラ」。軽自動車に求められることをEVでほぼすべて実現したと言えそう。

約255万円という「サクラ」と「eKクロスEV」の価格に対して、BYDのコンパクトハッチバック「ドルフィン」でさえ価格は330万円、ヒョンデの「KONA」は363万円からです。欧州車のEVは、ほとんどが400万円以上という値付けになります。つまり、ライバルに対する価格競争力が非常に高いのが「サクラ」なのです。

軽自動車のニーズにEVは最適解と言える存在

次に挙げられる売れる理由は、軽自動車とEVとの相性の良さです。軽自動車は、地方都市などでセカンドカーとして利用されることが多いクルマです。地方都市であれば、駐車場付きの戸建ての人も多いため、充電環境を整えやすくなります。

また、セカンドカーなので、長い航続距離も必要ありません。近距離移動中心であれば、バッテリー容量が小さくてもかまいませんし、充電にかかる時間も短くてすみます。それにバッテリーが少ないので、車両価格も抑えることが可能。まさに良いことずくめとなるのです。

画像: インテリアのクオリティも十二分に高い。

インテリアのクオリティも十二分に高い。

最後にクルマとしての魅力の高さです。「サクラ」はEVですから、非常に静粛性が高く、変速機がないので、加速がスムーズ。そして最大トルクが195Nmもあります。軽自動車のターボエンジン車の2倍ほどもトルクが大きいのです。ですから、非常に加速が力強いという特徴もあります。

そして、床下に重いバッテリーを積んでいるので、重心が低く、安定感も抜群。静かで、スムーズで、力強く、そして安定感に溢れる。走りという点では、軽自動車の中では1ランクも2ランクも上の実力を備えているのです。しかも、室内や荷室の広さが、普通のエンジン車と変わりません。利便性でも文句なし。軽自動車として非常に高い商品力を備えているのです。

価格が安く、使い方にフィットしており、クルマとしての出来もいい。これが「サクラ」が国内ナンバーワンの売り上げを実現した理由と言えるでしょう。

●著者プロフィール
鈴木 ケンイチ(すずき けんいち)1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。特にインタビューを得意とし、ユーザーやショップ・スタッフ、開発者などへの取材を数多く経験。モータースポーツは自身が楽しむ“遊び”として、ナンバー付きや耐久など草レースを中心に積極的に参加。

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