EQシリーズに準じたフロントマスク、だけではなかった
各車輪にひとつずつ、最高出力108kW(147ps)のモーターを合計4つ配置されて4輪を駆動する。これはインホイールモーターではなく、前後アクスルの各ハウジングに2つずつモーターを組み込んで、短いドライブシャフトでホイールに駆動力を伝達するシステムを採用する。
この4輪独立モーターを採用することによる興味深い機能がふたつある。Gターン(G-TURN)とGステアリング(G-STEERING)は、いずれも砂地や雪原などの低ミュー路面での使用に限られており一般道で実行することはできないが、最小回転半径を大幅に小さくするのだという。
Gターンは左右のタイヤを逆回転させることで、キャタピラー車の超信地旋回のようにその場でターン(2回転まで)するというもの。森の中や岩場で障害物をすり抜けていくとき、通常旋回では通れないような場面で有用だ。
もうひとつのGステアリングは、車速が25km/h以下のときに後輪内側のタイヤを軸にして回転するものだ。4輪それぞれで移動距離が異なることから一般エンジン車による実現は難しいが、4モーターEVでは駆動トルクを個別制御することによって実現できてしまう機能である。
こうした駆動トルクの配分を個別に可変できる「バーチャルディファレンシャルロック」機能は、オフロード走行だけでなく舗装路においても有効で機敏な走りも実現しているという。
4モーターによるシステム総合出力は432kW(587ps)を発生、しかも最大トルクに至っては1164Nmでゼロ発進から強大な加速力を見せ、超ヘビー級ボディながら0→100km/h加速は4.7秒を記録する。一方の最高速は電子制御により180km/hに抑えられているという。
欧州での車両価格はすでに公開されて14万2621.5ユーロ(約2400万円)に設定されて、ドイツ本国の販売サイトにもすでに掲載されている。
と、ここでひとつ違和感を感じた。フロントマスクの印象が今回公開された画像は異なるのだ。北京で発表されたときのデザインは、ヘッドライトからグリルまでをブラックのパーツで覆うEQシリーズに準じたフロントマスクとなっているのだが、ドイツ販売サイトで掲載されている画像はグリルに横ルーバーを備えた、まるでガソリンエンジン車と同様のデザインなのだ。
G580はコンセプトEQGの市販モデルでありながら車名に「EQ」のシリーズ名を持たない、Gクラスの一員だからこそ、従来モデルと同様の顔も設定されているのだろうか。深読みすれば、Gクラス=EVになるであろう未来を見越しての設定なのかもしれない。
ちなみに日本市場への導入時期や車両価格などの詳細はまだ発表されていない。
メルセデス・ベンツ G580 主要諸元(欧州仕様)
●全長×全幅×全高:4624×1931×1986mm
●ホイールベース:2890mm
●車両重量:3085kg
●モーター:交流同期電動機×4
●システム総合最高出力:432kW(587ps)
●システム総合最大トルク:1164Nm
●バッテリー総電力量:116kWh
●WLTPモード航続距離:434〜473km
●駆動方式:4WD
●タイヤサイズ:265/60R18