BYDは最高級から廉価版モデルまで圧倒的な車種展開
昨年中国市場のブランド別販売台数でかつての王者VWを抜き、中国の自動車産業の変革の代名詞となっているBYDは、量販ブランドのBYDで、秦L DM-i(プラグインハイブリッド)や、日本でも今年発売されるEVの海豹(シール)のDM-i版を発表するなど、王朝シリーズと海洋シリーズの両方で、EVやPHEVの品揃えを強化しています。アウディA4ぐらいのサイズの秦プラス DM-iは、1200km以上の航続距離を持ち、燃費は100km走行あたりわずか3.8リットル。今年に入って価格を7万9800元(160万円)と大幅に値下げして話題を呼びました。昨年の今頃、スモールEVのシーガル(海鴎)が7万元台の値段で驚かせましたが、それは今は一万元安い6万9800元からとなっており、NEVのリーダーであるBYDが値下げでライバルを振り落とそうとしています。
昨年EVとPHEVを300万台以上を販売したBYDは、BYDブランドの他に、ファンチャンバウ(方程豹)、デンツァ(騰勢)、ヤンワン(仰望)の4つのブランドを展開しています。このうちデンツァのミニバンD9は昨年の秋のミュンヘンのモビリティショーで、メルセデスGクラスのようなSUVの仰望U8は、ジャパンモビリティショーでも展示されました。今回、最高級ブランドの仰望は、U8のオフロード性能を強化した「U8越野プレイヤー」とフルサイズセダンのU7を発表しました。
実は前日に北京に2店しかない「仰望」販売店を訪れる機会があり、一年前に発売され価格は100万元を超えるU8が、月に(全国で)1000台以上売れていると聞いて驚きました。顧客は40代、50代の会社オーナーが多いとのことです。4輪モーターと2リッターのエンジンを搭載しプラグインHEVで1200馬力を誇るU8のオフロード版は、4輪のサスペンションをモーターでわずか10ミリ秒(0.01秒)で制御する「雲−Zテクノロジー」を新たに搭載し、オフロードの走行性と快適な乗り心地を実現しています。さらに、世界で初めて車両のルーフボックスに搭載したドローン(DJI製)をワンクリックで装填、発進させ車両と通信することで、風砂や霧などの悪天候でも車両を安全な走路に導く機能を搭載しています。また水深1.4mまで走行が可能なほか、アプローチアングルは37.5%で登攀能力やヒルディセント能力も最高レベルのものです。
仰望は、U8の他にスーパーEVスポーツカーのU9を発表済みですが、今回は新たに全長5.26m、ホイールベース3.16mのフラッグシップ4ドアセダンのU7がお披露目されました。これは出力1300馬力で0→100km/hの加速は2.9秒、Cd(空気抵抗係数)は量産車で世界最高の0.195で最高速は270km/hの最上級のサルーンとなっています。U8と同様に「雲-Z」アクティブサスペンションが搭載されています。価格は未発表ですが、ホームページで予約が始まっています。BYDは、ブレードバッテリーやセルツーボディ(CTB)、8 in 1などのアクセルや熱管理システムの統合など革新的技術でコスト優位を持つとともに、仰望ブランドなど最高級のブランドの展開においても、その性能や技術を強烈にアピールしています。VWやトヨタといった世界トップメーカーに肩を並べ凌駕しようとしているようで、中国市場での突出した存在感を世界に広げることができるか、大いに注目されます。