4月2日に発表された2024年の第1四半期(Q1)のテスラの販売台数はアナリストの予想を大幅に下回る38万6000台にとどまりました。前年同期比8.5%の減少で、四半期の販売台数の減少は2020年Q2のコロナパンデミック到来時以来となります。43万台程度を予想していた株式市場では、1日でテスラ株が165ドルまで5%以上下落しました。テスラは自動運転(FSD)ソフトを期間限定で無償提供したり、ネット広告で購買者の歓心を引こうと懸命ですが、果たして再び成長軌道に乗ることができるでしょうか。(タイトル写真は「テスラ モデルS」)

普通の自動車会社になりつつある

EVで圧倒的な先駆者利益を享受してきたテスラですが、市場がアーリーアダプターからアーリーマジョリティに移行するにつれ、その優位は薄れつつあります。アップルはiPhoneを次々にスペックアップして価格も上げ、買い替え需要を喚起してトップの座を15年にわたって維持してきましたが、最近はそれも翳りが見えます。OTA(over the air)によるソフトウェア更新などで先行したテスラも、インフォテイメントや自動運転(支援)などの性能は、テスラを模倣し急速に追いついてきた中国メーカーに対して優位を主張できなくなっています。

一発逆転は、マスクCEOが何度も約束しながら未だ実現していないFSD(フルセルフドライビング)でしょうが、ウェイモなど多くのライバルが開発競争に凌ぎをけずる中、レベル5の完全自動運転にはあと10年くらいかかると見られており、それはついに空手形に終わる可能性もあります。今後もテスラが目覚ましい成長を望むなら、蓄電池や人型ロボットのオプティマス事業やAI(!)などEV以外で収益を確保する必要がありそうです。

テスラの今年の販売台数は220万台程度との予想が主流でしたが、Q1の実績を見る限り、昨年を上回ることさえ容易ではなさそうです。年初から30%以上下落した同社の株価は、ツイッター買収時のゴタゴタで2022年末に付けた110ドルの底値に向けて今後さらに下落もあり得そうです。時価総額(5500億ドル)では、この半年で40%上昇しているトヨタ(4000億ドル)との差が縮まり、ひょっとしたら逆転さえあるかもしれません。

画像: 昨年8月には最新のFSD搭載車をドライブする様子をライブストリームしたマスク氏だがその後、新たな自動運転関係の発表はない。

昨年8月には最新のFSD搭載車をドライブする様子をライブストリームしたマスク氏だがその後、新たな自動運転関係の発表はない。

自動車のアップルになれるか

モデルYだけで、トヨタカローラ並みの年間120万台以上を世界で販売し、価格も米国の平均販売価格と同等の4万ドル台半ばになったテスラは、「もはやラグジュアリーブランドではなく、今後はトヨタやフォードと比較する」という記事を米オートモティブニュースが先月掲載しました。それに対して業界の識者からは、「性能、イノベーション、デザインやイメージにおいて未だにラグジュアリーの資格を持っている。しかし敢えていえば、従来のカテゴリー分けが通用しないブランド『X』だ」という反論がされたりしています。

これも興味深い議論ではありますが、少なくともテスラがスマホにおけるアップルのように、世界一の量を販売しながら価格も最高というポジションを維持するかというと、製品が遙かに多様な自動車ではそれは難しいでしょう。テスラが次に破壊的(disruptive)な革命を起こすとすれば、それはモデル2になるのか。もしラグジュアリーと同等の最高レベルの性能(速さ、航続距離、充電時間、ソフトウェアなど)を3万ドル以下のコンパクトカーで実現すれば、それはテスラの「X」たる神話を再興させるに十分でしょう。消費者にとっては願ってもない話ですが、実現すれば資本主義のビジネス原理そのものを破壊してしまうかもしれません。(了)

●著者プロフィール
丸田 靖生(まるた やすお)1960年山口県生まれ。京都大学卒業後、東洋工業(現マツダ)入社。海外広報課、北米マツダ(デトロイト事務所)駐在をへて、1996年に日本ゼネラルモーターズに転じ、サターンやオペルの広報・マーケティングに携わる。2004年から2021年まで、フォルクスワーゲングループジャパン、アウディジャパンの広報責任者を歴任。現在、広報・コミュニケーションコンサルタントとして活動中。著書に「広報の極意−混迷の時代にこそ広報が活躍できる」(2022年 ヴイツーソリューション)がある。

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