メルセデスの修正はEV販売の減速を裏付けた
2021年7月にメルセデス・ベンツは、「2030年のオール・エレクトリック化に向け準備」と宣言し、エンジン車の販売を(中国を除いて)2033年で終了と公表したアウディよりもさらに大胆なEV転換方針で驚かせました。その後3年間にEQAからEQSまでほぼフルラインアップでEVを品揃えし、「2025年までにxEVで50%」を達成する計画でしたが、これを「2020年代の後半に」と今回変更し、5年近く後ろにずらしました。
オーラ・ケレニウスCEOは、「EVへの転換は一直線には進まない」と認めた上で、「2039年に(サプライチェーンを含め)ネット・カーボンニュートラルを達成する戦略目標は不変だが、それに向けた戦術は柔軟性を持たせる」と発言。2030年代に入っても電動化(electrified)したエンジン車を継続し、顧客のニーズに対応していくと述べました。
メルセデス・ベンツ(乗用車)の昨年のEVの世界販売台数は24万台(前年比+61%)で、全乗用車の販売台数(204万台)のうち12%に止まりましたが、プラグインHEVを含めると40万1000台で、xEVのシェアは20%になります。欧米の自動車市場が2桁の伸びを示した中で、販売台数は横ばい(前年比+0.2%)と伸び悩んだ上、営業利益率は2022年の14.6%から12.6%へと低下しており、コストの高いEVが収益の足を引っ張っています。
「市場環境が許す限り」という条件付きではありましたが、「2030年オールEV化」という戦略の修正を余儀なくされたのは、市場のEVシフトのペースが(中国を除いて)期待通りに進んでいない事実を裏付ける形となりました。さらに、今回メルセデスが新たにKPI(業績評価指標)に設定した「xEVが販売に占めるシェア」も、2024年は昨年並みの19〜21%と予想していることから、当面のEV販売を厳しく見ていることが分かります。
メルセデスは、2025年に新たに開発したMMA(メルセデス・モデュラー・アーキテクチャ)に基づく新型CLA(EV)を発売する予定で、これは航続距離750km、15分で400km走行分の充電が可能でコストも30%削減する予定です。NCMとLFPの両タイプの次世代バッテリーを使い分けて、コンパクトからミッドサイズまでカバーするこの次世代プラットフォームで、次のEV販売の飛躍を狙っています。