2024年2月22日の昨年度の決算説明会で、メルセデス・ベンツが「市場環境が許せば、2030年に新車販売を全てEVに」の目標を取り下げ、「2020年代後半にxEV(※1)を50%」へと大幅に修正しました。また、アップルも開発を進めていたEVのプログラムを中止し、人員をAIに注力すると決めたようです。EVの需要が踊り場に差しかかった今、リヴィアン(Rivian)やルーシッド(Lucid)などのEVスタートアップも昨年並の販売しか見込めないと表明しEV市場での生き残りが厳しさを増しています。※1:xEVはメルセデス・ベンツではEVとプラグインHEVを指す。マイルドHEVは含まず。(タイトル写真:メルセデス・ベンツ)

メルセデスの修正はEV販売の減速を裏付けた

2021年7月にメルセデス・ベンツは、「2030年のオール・エレクトリック化に向け準備」と宣言し、エンジン車の販売を(中国を除いて)2033年で終了と公表したアウディよりもさらに大胆なEV転換方針で驚かせました。その後3年間にEQAからEQSまでほぼフルラインアップでEVを品揃えし、「2025年までにxEVで50%」を達成する計画でしたが、これを「2020年代の後半に」と今回変更し、5年近く後ろにずらしました。

オーラ・ケレニウスCEOは、「EVへの転換は一直線には進まない」と認めた上で、「2039年に(サプライチェーンを含め)ネット・カーボンニュートラルを達成する戦略目標は不変だが、それに向けた戦術は柔軟性を持たせる」と発言。2030年代に入っても電動化(electrified)したエンジン車を継続し、顧客のニーズに対応していくと述べました。

画像: 欧州、米国、中国、日本でも独自の充電インフラの整備を加速する計画で、ケレニウスCEOのモビリティのEVシフトへの信念は揺るぎない。(写真はメルセデス・ベンツ)

欧州、米国、中国、日本でも独自の充電インフラの整備を加速する計画で、ケレニウスCEOのモビリティのEVシフトへの信念は揺るぎない。(写真はメルセデス・ベンツ)

メルセデス・ベンツ(乗用車)の昨年のEVの世界販売台数は24万台(前年比+61%)で、全乗用車の販売台数(204万台)のうち12%に止まりましたが、プラグインHEVを含めると40万1000台で、xEVのシェアは20%になります。欧米の自動車市場が2桁の伸びを示した中で、販売台数は横ばい(前年比+0.2%)と伸び悩んだ上、営業利益率は2022年の14.6%から12.6%へと低下しており、コストの高いEVが収益の足を引っ張っています。

「市場環境が許す限り」という条件付きではありましたが、「2030年オールEV化」という戦略の修正を余儀なくされたのは、市場のEVシフトのペースが(中国を除いて)期待通りに進んでいない事実を裏付ける形となりました。さらに、今回メルセデスが新たにKPI(業績評価指標)に設定した「xEVが販売に占めるシェア」も、2024年は昨年並みの19〜21%と予想していることから、当面のEV販売を厳しく見ていることが分かります。

メルセデスは、2025年に新たに開発したMMA(メルセデス・モデュラー・アーキテクチャ)に基づく新型CLA(EV)を発売する予定で、これは航続距離750km、15分で400km走行分の充電が可能でコストも30%削減する予定です。NCMとLFPの両タイプの次世代バッテリーを使い分けて、コンパクトからミッドサイズまでカバーするこの次世代プラットフォームで、次のEV販売の飛躍を狙っています。

画像: 昨年9月のIAAモビリティでお披露目された「コンセプトCLA」。

昨年9月のIAAモビリティでお披露目された「コンセプトCLA」。

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