2023年12月19日(現地時間)、フォルクスワーゲングループ(フォルクスワーゲン、アウディ、ポルシェ、スカウト※)は、2025年から北米地域で販売するすべてのモデルの充電規格にNACS(いわゆるテスラ規格)を採用することを発表した。これによりNACS規格採用を発表していない大手完成車メーカーは、現時点でステランティスグループのみになったが、こちらも近日中に発表される可能性がきわめて高い。※北米向けのEVブランド

北米充電ネットワークの覇権争いはテスラの勝利

北米における充電規格の事実上の統一が雪崩をうって進んだ2023年後半、交渉中であることを明らかにしつつも具体的な発表はなかったフォルクスワーゲングループが、ついに2025年から採用することを発表した。

NACS(North American Charging Standard:いわゆるテスラ規格)の採用を巡っては、2022年11月にテスラが自社の充電コネクターの規格/設計を公開したことが大きく影響している。

北米ではこれまでほとんどの完成車メーカーが「CCS(Combined Charging System:コンバインド充電システム規格)」を採用していた。しかし、CCS規格の充電器はその性能(充電出力・充電スピード、決済方法など)に対してユーザーの要望を満たすことができず、また故障も多いなどの不安材料を抱えていた。

画像: CCS規格は北米で普及はしているが、利便性ではテスラのスーパーチャージャーに及ばなかった。

CCS規格は北米で普及はしているが、利便性ではテスラのスーパーチャージャーに及ばなかった。

一方、テスラが開発したNACS規格の急速充電器「スーパーチャージャー」は全米で1万5000基を超える巨大なネットワークを誇る。さらに高出力/短時間の充電が可能で、コンパクトな充電プラグによる取り回しの良さ、充電プラグを差し込むだけで決済が可能など、あらゆる面でCCSを凌ぐ利便性を備えている。

フォルクスワーゲングループ車のオーナーは、2025年以降のモデルからスーパーチャージャーの利用が可能となる。また、フォルクスワーゲングループ傘下のElectrify AmericaとElectrify Canadaが運営する3800基以上のCCS規格急速充電器にもNACS規格のコネクターが追加される予定だ。また、現在販売中のCCS規格採用車には専用アダプターを用いてNACS規格でも充電可能になる。

画像: 高出力による短時間充電、充電プラグの取り回しのしやすさ、さらに故障が少ないなどNACS規格の優位性は明らかだった。

高出力による短時間充電、充電プラグの取り回しのしやすさ、さらに故障が少ないなどNACS規格の優位性は明らかだった。

次はV2G(電力供給網)を巡る新たな競争が始まる気配

2023年12月19日時点で、NACS規格採用を発表しているのは完成車メーカーは以下のとおり。

・2023年5月:フォード/リンカーン
・2023年6月:GM、リヴィアン、ボルボ/ポールスター
・2023年7月:メルセデスベンツ、日産/インフィニティ
・2023年8月:フィスカー
・2023年9月:ホンダ/アキュラ、ジャガー
・2023年10月:ヒョンデ/キア/ジェネシス、BMW/ロールスロイス/MINI、トヨタ/レクサス
・2023年11月:スバル、ルーシッド
・2023年12月:フォルクスワーゲン/アウディ/ポルシェ/スカウト

北米でEVをラインナップする大手完成車メーカーでまだ発表がないのはステランティスグループのみ。もっとも、テスラとは調整中であることは明らかにしており、NACS規格採用の発表はもはや秒読み段階にある。残るは、ヴェトナムに本拠を置くビンファストだが、販売規模では大手に及ばない同社もNACS規格の採用に踏み切るのは時間の問題だろう。

CCS、CHAdeMO、そしてテスラのNACS、覇を競ってきた北米大陸のEV充電規格は、わずか半年足らずでテスラによる統一がほぼ完了した。今後、各自動車メーカーはその先にある電力供給網(V2G)の整備や、ソフトウエアの開発に開発原資を振り向けることになる。すでに、ホンダ、BMW、フォードの3社は電力ネットワークサービス事業会社「Charge Scape(チャージスケープ)」の設立を発表済みだ(2023年9月12日)。EVを巡る次なる戦いは、すでに始まっている。

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