ついにテスラがサイバートラックの正式な納車をスタート。去る2023年11月30日にはその納車式が行われた。2019年の発表以来、すでに200万台を超えるプレオーダーを抱える新型EVピックアップトラック。その驚愕の中身とは?(タイトル写真はハイパフォーマンス版の「サイバービースト」)

発表から4年以上、バックオーダーを消化するのは数年後か

最初の発表からすでに4年以上が経過した「サイバートラック(Cybertrack)」。全世界のバックオーダーはすでに200万台を超えているという。SF映画からそのまま抜け出してきたような奇抜なボディは、無塗装の超硬質ステンレス(ウルトラハードステンレススチールエクソスケルトン)。式典では、銃で撃たれても弾丸は貫通することができないほど硬く、かつ衝撃吸収性が高いことがアピールされた。

さらに、ポルシェ911よりも速く、しかもスタビリティはスポーツカーに匹敵すると胸を張る。納車式に登壇したイーロン・マスクCEOは相変わらず意気軒高だ。とは言え200万台を超えるバックオーダーを今後どのように捌いていくのだろうか(早くても2年はかかりそうだが…)。

画像: 銃撃されても車室内に弾丸が届かない。アメリカの内情をうかがわせる表現だが、説得力はあるのだろう。

銃撃されても車室内に弾丸が届かない。アメリカの内情をうかがわせる表現だが、説得力はあるのだろう。

巨大なボディも北米ではふつう、最強グレードはポルシェより速い

最大積載量はアフリカ象一頭に匹敵する約1134kg、牽引能力は約4990kg(4輪駆動モデル)で、建築資材などの運搬にも十分な動力性能が与えられている。ボディサイズは、全長×全幅×全高:5682.9×2200.7(ミラー格納時)×1790.8mm。日本の道路事情では非現実的とも思えるが、これでもアメリカでは平均的な大きさだ。

画像: 広大なベッド(荷室)のほかフロントトランクや隠しギアロッカーなど合計67立法フィート分(約1897L)の収納スペースをもつ。

広大なベッド(荷室)のほかフロントトランクや隠しギアロッカーなど合計67立法フィート分(約1897L)の収納スペースをもつ。

ラインナップは、前1基+後2基のトライモーター駆動のAWDモデル「サイバービースト(CYBERBEAST)」を頂点に、前1基+後1基のデュアルモーター駆動の「AWD」、そして2025年から販売開始予定でシングルモーター「RWD」を揃える。それぞれの価格とスペックは以下のとおり

【サイバービースト】
現地車両価格:約1468万1000円
航続距離:約515km
0→100km/h加速:2.7秒※
最高速度:209km/h
モーター最高出力:621kW

【AWD】
現地車両価格:約1174万5000円
航続距離:547km
0→100 km/h加速:4.3秒※
最高速度:180km/h
モーター最高出力:441kW

【RWD(2025年に生産開始予定)】
現地車両価格:約895万5000円
航続距離:402km
0→100km/h加速:6.7秒※
最高速度:180km/h
モーター最高出力:225kW
※=0→60mphをkm/hに換算。

搭載されるバッテリーはいずれも三元系(NMC)ではなく、いわゆるハイニッケルだ。800Vアーキテクチャーで250kW急速充電に対応している。中でもサイバービーストの群を抜く性能は、マスクCEOが胸を張るのも道理である。式典では、ポルシェ911と加速を競う動画も公開され、参加者からひときわ大きな歓声が上がっていた。
さらにテスラ車初のステアバイワイヤ、及び後輪操舵システムを搭載しているのもトピック。モデルSよりも小さな回転半径を実現することで、大きなボディをものともしない取り回し性能を発揮する。とくにステアバイワイヤの採用は、同社のFSD(自動運転)プログラムに今後新たな機能が追加される布石なのかもしれない。

画像: 荷台下のスペースに「レンジエクステンダー」と呼ばれる追加バッテリーを搭載可能。

荷台下のスペースに「レンジエクステンダー」と呼ばれる追加バッテリーを搭載可能。

注目しておきたいのが「レンジエクステンダー(RANGE EXTENDER)」と呼ばれる追加バッテリーがオプション設定(1万6000ドル:約234.9万円)されているところ。荷台下のスペースに後付けすることで、航続距離をAWDグレードで最大470マイル(約756km)まで延長することができる。

テスラ初の外部給電機能を搭載、他モデルに波及か

日本の道路事情では非現実的とも思えるサイズだが、日本人が注目しておくべきはテスラ車として初めてV2LやV2H機能を搭載してきたところだろう。テスラは自社の展開する蓄電池(パワーウォールなど)やソーラーパネル事業などとの兼ね合いもあるのか、すでにNACS充電プラグには外部給電に対応する仕様は盛り込まれていたものの、実際には搭載していなかった。

画像: 荷台には9.6kW・240VのACコンセントも。いわゆる車対車の充電(V2V)にも対応する。

荷台には9.6kW・240VのACコンセントも。いわゆる車対車の充電(V2V)にも対応する。

V2Lは、車内と荷台にそれぞれ120V/ACコンセントを2つずつ合計4カ所設置され、さらに荷台には最大出力9.6kW・240V/ACコンセントも搭載されている。つまり、ほかのEVへの充電(V2V)も可能なのだ。V2H機能もついに搭載してきた。テスラのウォールコネクター(普通充電器)とパワーウォール(蓄電池)を介して自宅への給電が可能になったのだ。

画像: V2Hに否定的なテスラだったがついに採用。外部給電は日本独自規格のCHAdeMOの優位性を担保していたが、今後の行方は注視しておいたほうが良さそうだ。

V2Hに否定的なテスラだったがついに採用。外部給電は日本独自規格のCHAdeMOの優位性を担保していたが、今後の行方は注視しておいたほうが良さそうだ。

V2L、V2Hとも、これから搭載車種は拡大していく可能性は高い。となれば、CHAdeMO(チャデモ)の優位性がどこまで保たれるかに注目しておく必要がありそうだ。なにかと話題の多い久々の新型車投入だが、これからもテスラがEV業界を刺激し続けることは間違いなさそうだ。

This article is a sponsored article by
''.