モビリティシフトを実行しつつある欧州都市
講演後のパネルディスカッションでは、EVの研究開発を手がける東京アールアンドデー社の福田雅敏氏が、この秋にパリ、アムステルダム、ストラスブール、ブリュッセルなどを視察した報告を行い、市街地ではバスはほぼ電動化(ハイブリッド含む)、自家用車はLRT(Light Rail Transit=市街電車、トラム)や自転車に置き換わりつつある実態を紹介しました。スマートEQやシトロエン・アミのほか、様々なL6e(※1)規格の超小型EVが多く見かけられるとのことです。※1:欧州の超小型電気自動車の規格。車両重量350kg以下、最高速度45km/h以下、最大連続定格出力4kW以下、定員2名。原付免許があれば14歳以上で運転できる。
パリは来年のオリンピックを契機に、セーヌ川河畔の道路を歩行者専用にし、シャンゼリゼ通りの車線の1つを二輪車に開放し、ランアバウトは緑地や広場に転換する計画だそうです。筆者が9月のIAAモビリティで見てきたように、ミュンヘンの中心部は歩行者中心になっており、IAAが市街地を開放して展示スペースにできたのは、そのような都市計画が存在するから可能だったのでしょう。
「明日のクルマは誰が作る?」
パネルディスカッションの最後で、これからどんなモビリティを作りたいかと聞かれた舘内代表は、「最近腰が痛いというとセニアカー(最高速6km/h)がありますよと言われるが、気持ちとしてはそこそこ早くてワクワクするものに乗りたい。90km/h(?)くらい出る気持ち良い小型EVが作れれば」と冗談を交えて話しました。
日本EVクラブでも、山形県飯豊町から3輪(2+1)EV開発委嘱を受けているそうです。最近、都内でもゴーカートで観光するツアーを見かけますが、自転車とクルマの間くらいのスピードで走れる超小型EVが未来の東京の道路で市民権を得ても不思議ではありません。
EVフェスティバルが、サーキットを離れたことを寂しく感じる人もいるでしょうし、時にはまたサーキットでERKやコンバートEVを走らせることができれば楽しそうと個人的にも思いますが、都心に会場を移したEVフェスティバルは、未来のモビリティについて行政や自治体、産業界、ユーザーが一緒になって考える場として、これからも世論に一石を投じていってもらいたいと思います。(了)
●著者プロフィール
丸田 靖生(まるた やすお)1960年山口県生まれ。京都大学卒業後、東洋工業(現マツダ)入社。海外広報課、北米マツダ(デトロイト事務所)駐在をへて、1996年に日本ゼネラルモーターズに転じ、サターンやオペルの広報・マーケティングに携わる。2004年から2021年まで、フォルクスワーゲングループジャパン、アウディジャパンの広報責任者を歴任。現在、広報・コミュニケーションコンサルタントとして活動中。著書に「広報の極意−混迷の時代にこそ広報が活躍できる」(2022年 ヴイツーソリューション)がある。