ホンダはエネルギーマネジメントの事業化を目指す
椛澤氏は、2040年にカーボンニュートラルという同社のCO2の削減目標を達成するには、電力の自然エネルギーへのシフトに加え、電力需給のマネジメントと蓄電池の普及が不可欠と述べました。その蓄電池として今後圧倒的に容量が増えるのは車載電池ですが、自動車は1日のうち95%の時間は停止しており、「擬似定置型バッテリー」といえるEVをV2H、V2Gでどう活用していくかが重要になるわけです。
ホンダは先のJMSでも、一人乗りの電動車椅子(UNI-ONE)から、電動キックボード、eバイク、自動運転の搬送用ローダー、軽自動車EVからeVTOLまで、クルマだけでなくモビリティ全体の電動化シフトを視野に提案していました。またEVスクーターや軽自動車EVに使用できる携帯型の蓄電池MPP(モバイルパワーパックe)を1本(約1.3kWh)88,000円で販売しています。このMPPを交換電池とするEVスクーターのシェアリングサービス(Gachaco)がENEOSと国内2輪メーカー4社の共同事業として立ち上がっており、BaaS(Battery as a Service)の先駆けと言われています。
大小様々なモビリティの電動化と同時に必須となってくるのが、電力マネジメントです。ホンダは、ビジネスとしてエネルギー事業へ進出しようとしており、北米や欧州などでエネルギーアグリゲーターとしてその事業化に取り組みつつあります。海外ではテスラがいち早く家庭用蓄電池「パワーウォール」や系統電力調整用の大規模蓄電池の設置事業を進めています。何百万台ものテスラ車のバッテリーをグリッドに繋ぎ、蓄電池として活用するビジネスモデルは、かねてよりイーロン・マスクCEOが描いているものです。
このほかに、シンポジウムでは蓄電池の生産と急速充電器の配備を進める「パワーエックス」やスポット電力の安い昼間の充電を奨励するEV昼充電協議会、急速充電器や蓄電池のリーディングメーカーであるニチコン株式会社からも登壇しました。10月に発表されたニチコンの新型V2H用「パワーステーション」はサイズや重量を従来モデルの3分の1以下にしています。価格は128万円でまだ高価ですが、国の補助金が工事費を含めて最大115万円出るのでかなりハードルは下がります。実際、令和5年度のV2H設置補助金は募集開始からひと月余りで消化されてしまっています。EV購入補助金もそうですが、米国のIRAのようなもう少し長期的な補助の仕組みを作らないと、安定的な需要は見込めないかもしれません。