昨年8月にバイデン政権が向こう10年間に渡るEVへの補助金などで4300億ドルを支出する法案を成立させ、今年4月に米国環境保護局(EPA)が2032年のEV比率が67%に達するCO2排出ガス規制案を発表した米国ですが、ここに来て、EV市場の成長スピードの鈍化や自動車メーカーのEVシフトの減速を窺わせるニュースが続いています。金利の上昇で割高なEVの購入を見合わせる消費者も出ている模様で、現地の報道を見ながらその辺りを探ってみます。(写真はフォードのEV、F-150ライトニングの生産工場)

テスラの販売が減速

10月11日(水)に第3四半期(以下Q3)の決算を発表したテスラの世界販売台数は435,059台(前年同期比+27%)でしたが、この1年で主力モデルを何度も値下げしたこともあり売上高は9%増にとどまりました。自動車部門の粗利益率も一年半前は30%近かったものが16%まで下落し、同社の株価は1日で約5%下落しました。イーロン・マスクCEOは、今年180万台の販売目標の旗は下ろしていませんでしたが、25,000ドルのEVを生産する予定のメキシコ工場の着工は急がないと述べるなど、終始慎重な発言が目立ちました。

欧州ではモデルYが年間の車種別販売台数で初の首位を獲得する勢いですが、米国では直近3カ月のEV市場のシェアは昨年の60%から50%に下がりました(※1)。世界販売でも中国のBYDにほぼ並ばれました。テスラは販売の96%をモデル3とモデルYの2車種に依存しており、11月末から納車が開始されるサイバートラックも、年産25万台規模に達するのは順調に行っても18カ月後の2025年になるとのことで、その成長力には翳りが見え始めています。※1:Cox Automotive発表資料による。

画像: 7月にテキサス工場で生産が始まったサイバートラックだが、ステンレススチールボディという技術的チャレンジもあり、量産化は大変な困難を伴うとE・マスク氏は苦労を滲ませた。

7月にテキサス工場で生産が始まったサイバートラックだが、ステンレススチールボディという技術的チャレンジもあり、量産化は大変な困難を伴うとE・マスク氏は苦労を滲ませた。

米国では海外ブランドがEVシェア拡大に貢献

中国ではNEVが3割を超え、欧州でもEVのシェアが15%と順調に増加していますが、米国市場においてもQ3のEV販売台数は313,086台(前年同期比+49.8%)(※2)、市場シェアは7.9%と前年同期の6.1%から伸びています。EV専業のテスラやリヴィアンを除くと牽引しているのはBMW, メルセデス・ベンツ、アウディ、VW、ボルボ、ヒョンデなどの海外ブランドで、これらの多くがEV販売台数を2倍から3倍に増やしています。販売に占めるEVの比率も15.6%に達したBMWを筆頭にいずれも12%を超えています(ヒュンデは約10%。)※2:Cox Automotive and Kelly blue bookによる。

これに対して、米国勢はGMの最量販ブランド、シボレーが2024年モデルで導入するEVのシルバラードやブレイザー、イクイノックスのデリバリーがまだ始まっておらず、Q3のシボレーの販売台数におけるEVのシェアは3.6%、フォードも4%程度です。

画像: 直近の米国販売におけるEVのシェアが15%を超えたBMWはi4やiX(写真)が前年比200%以上の伸びを示す。

直近の米国販売におけるEVのシェアが15%を超えたBMWはi4やiX(写真)が前年比200%以上の伸びを示す。

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