CCS/NACS対応の400kW急速充電器で快適な充電環境を提供
2027年までに、北米、欧州、中国など主要市場に合計1万基を超える高出力充電ネットワークを整備すると発表していたメルセデス・ベンツ。その北米での充電ネットワークがいよいよ稼働を始めた。
新たな北米充電ネットワークは、メルセデス・ベンツと再エネ企業のMN8エナジーによる合弁会社「メルセデス・ベンツHPC NA(ノースアメリカ)」が運営する。同社初の充電ステーションは、ジョージア州サンディスプリングにあるメルセデス・ベンツUSA本社に隣接して開設された。
その設備はさすがメルセデス!と唸らされるもの。最高出力400kWを誇る急速充電器は、CCSに加えNACSにも対応したいわゆるデュアルガン方式。さらにメルセデス・ベンツ車だけでなく、あらゆるブランドのEVオーナーに開放し、業界最速の充電速度を提供する。供給される電力はすべて再生可能エネルギーだ。
各充電器には“インテリジェントインジケーター”と呼ばれる高さ15フィート(約4.6m)のパイロンが取り付けられており、さまざまなステータス(使用中、充電時間、予約状況など)がステーションに乗り入れることなく沿道から確認できる。
雨天や夜間などいつでもスマートな充電が可能だ
充電スペースには太陽光発電パネルが取り付けられた屋根状の“ソーラーキャノピー”が設置されており、雨天でも濡れずに充電作業が可能。また、発電パネルによって供給される電力によるLED照明によって、スタンド内は常に煌々と明るい。日本の充電ステーションの多く(とくにSAや道の駅など)は、夜間は薄暗がりの中でプラグの抜き差しをしなければならないが、これなら気持ち良く利用できそうだ。
また、ハンディキャップ対応車両が利用しやすいように設計された充電スペースや、大型トレーラーなど車体が長く大きい車両でも利用しやすい屋根のないドライブスルー充電スペースを設けるなど、その利便性の高さは徹底している。
特筆すべきは、充電の待ち時間を快適に過ごすための“充電ラウンジ”の併設だろう。そもそも400kWの高速充電器なので待ち時間は短いはずだが、それでもソファ、ラウンジチェア、テーブル、自動販売機、そしてもちろんトイレなどを完備して、短い充電セッションでも快適に過ごすためのラウンジが併設されているのはさすがプレミアムブランドである。
またMercedes me Chargeアプリのユーザー向けの「プラグ&チャージ」も可能。いまはメルセデスEQのオーナーに限られるが、充電プラグを差し込むだけで充電が開始され、終了してプラグを抜けば自動的に決済も終了する。
これからの充電施設に求められるサービスをいち早く実現
EVオーナーの多くが感じているストレスを解消し、高速で利便性が高くクリーンで信頼性の高い充電体験を提供するアイデアが盛りこまれており、これからの充電ステーションに求められる姿をいち早く実現していると言えそうだ。
メルセデス・ベンツHPC NAは、2023年末までにテキサス州、フロリダ州、アラバマ州、ジョージア州にもこのプレミアムな充電スポットを開設するという。さらに2024年上半期には、Buc-ee's社(バッキーズ:テキサス州に本拠バッキーズ置く巨大なサービスエリア/ショッピングモールの運営会社)との協業によって、新たな充電ステーションの在り方を探っていくことも明らかにしている。
ちなみにメルセデス・ベンツは、ホンダ、GM、BMW、ヒョンデ、キア、ステランティスとともに、北米大陸におけるEV用高出力充電器を採用する新たな充電ネットワーク(数年内に3万基以上の高出力充電器設置)を構築する合弁会社の設立に合意している(2023年7月26日)。新会社の設立発表は年内にも行われる見通しだが、独自の展開が始まったメルセデス・ベンツの急速充電ステーションは、この7社連合の設置目標に含まれることになる。
またメルセデス・ベンツは日本でも2024年を目途に、独自の急速充電ネットワークを整備すべく検討を進めている。現在の正規販売店に設置している急速充電器よりも、より出力の高い充電器を設置する見込みだというが、果たしてどのようなスタイルになるのだろう。現状、電力供給にも不安がある日本でどこまでできるか。今後の展開が楽しみだ。