GMやフォードがEVへの投資の先送りを決めた米国と同様、欧州市場でも金利の高騰や政府の補助金の減額などによりEV販売の頭打ちが見られます。ドイツのフォルクスワーゲン(VW)はEV工場での減産を余儀なくされ、メルセデス・ベンツもEV販売の熾烈な競争の収益へのインパクトを憂えている中で、フランスのルノーやスティランティス傘下のブランドは、これから2万ユーロ台のスモールEVを次々に投入します。これらは、EV市場を再点火する起爆剤になるのでしょうか。(下の写真はルノーのEV事業部門であるアンペアが2026年までに投入するラインアップ)

来年は量販価格帯EVが相次いで投入

EV販売の鈍化が明らかになり、当面はフルハイブリッドやプラグインHEVが現実的な選択という風潮が強まっている国も多い中で、B&Cセグメントに注力するアンペアの事業計画は注目されますが、フランス勢ではステランティス傘下のシトロエンも、来年第2四半期に「e-C3」を発売し、またフィアットパンダの後継車と言われるEVも7月に発表すると予告しています。ドイツメーカーに比べてスモールカーの販売比率が高いフランスやイタリアのブランドは、Bセグメントにおいて来年からEVを矢継ぎ早やに出していくわけです。

画像: e-C3はハイドロバンプストッパーを採用したサスペンションでシトロエンらしい「絨毯の乗り心地」を実現。最新のインフォテイメントを搭載して価格は23,300ユーロから。生産はスロヴァキアの工場。

e-C3はハイドロバンプストッパーを採用したサスペンションでシトロエンらしい「絨毯の乗り心地」を実現。最新のインフォテイメントを搭載して価格は23,300ユーロから。生産はスロヴァキアの工場。

e-C3はすでにインド市場で発売されていますが、欧州モデルは44kWhのLFP(リン酸鉄リチウムイオン)バッテリーを積んだ航続距離320km(WLTP)のモデルで23,300ユーロと発表されており、現状35,000ユーロ以上するプジョーe-208/e-2008やフィアット500e、オペルモッカEVと比べても格段に安い設定です。フォルクスワーゲンが計画する25,000ユーロのEV「ID.2」は2026年導入の予定であり、テスラの25,000ドルEV(ベルリン郊外の工場で生産する可能性をイーロン・マスクCEOが示唆)もまだ2〜3年先になりそうな中、フランス、イタリアブランドのBセグメントEV攻勢が先んじています。

画像: 2020年に発売されたフィアット500eは欧州で人気EVの一つ。2023年にSUV版の600eも追加された。

2020年に発売されたフィアット500eは欧州で人気EVの一つ。2023年にSUV版の600eも追加された。

現在欧州市場で一番安価なEVは、ルノーのサブブランドのダチア「スプリング」のEVで価格は20,800ユーロ(仏価格 ※1)ですが、バッテリー容量は26.8kWhで航続距離は230km(WLTP)とミニマムのEVスペックです。その点、e-C3やパンダの後継EVなどは、コストに優れ性能の高いLFPバッテリーを積み、欧州のスモールカーユーザーの日常的な需要を満たすクルマと言えるかもしれません。※1:フランス政府のエコロジー補助金5,000ユーロが適応されて実際は15,800ユーロ(付加価値税VAT込み)となる。

画像: ダチアスプリングは、中国で生産される全長3.7m強のスモールEVで2021年春に欧州に導入された。廉価で機能的なSUVスタイルでEV販売台数トップ10に入るが、ユーロNCAPでは星1つと安全性には不安がある。

ダチアスプリングは、中国で生産される全長3.7m強のスモールEVで2021年春に欧州に導入された。廉価で機能的なSUVスタイルでEV販売台数トップ10に入るが、ユーロNCAPでは星1つと安全性には不安がある。

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