そもそも中国製車とは何を指すのか
一部の報道では、欧州市場で中国製車が既に8%のシェアとありますが、そもそも中国製車の定義は何でしょうか。英国を中心にシェアを伸ばしているMGは上海汽車(SAIC)傘下のブランドで中国で生産されていますが、英国人はMGという往年のスポーツカーブランドを中国製と意識していないかもしれません。ボルボは吉利汽車(Geely)が82%の株式を保有していますが、欧州で販売されている車両は欧州内生産であり、ボルボを「中国ブランド」と考える人はいないでしょう。一方で、その傘下のポールスターは、全量中国で生産されています。
中国製の定義が紛らわしいのですが、今回の欧州委員会の調査の場合、「中国内で生産され欧州に輸入販売されている車両」が対象で、中国ブランド車だけでなく、中国の工場で生産されたテスラ「モデル3」やBMW「iX3」、ポールスター2/3、ルノーグループのダチア・スプリングス、スマートなどを含みます。
欧州に輸入される中国生産車の6割以上はEVです。今年1〜7月に西ヨーロッパ(※1)に輸入された中国製EVは224,254台ですが、その半数以上の136,823 台が欧米自動車メーカーの輸入車であり、その内68%が上海工場製のテスラです。※1:2004年以前からのEU加盟国にノルウェー、スイス、アイスランド、UKを加えた欧州主要18カ国。
中国車の脅威は、「事実というより理論上」のもの?
エンジン車を含めて西ヨーロッパで一番売れている中国ブランド車(※2)がMGで、今年1〜7月に118,610台を販売しています。次が吉利汽車とボルボの合弁のポールスター、さらにチェリー(奇瑞汽車)、吉利汽車傘下のLink&Coが続きますが、これらの販売台数は2万台前後です。昨年秋から欧州で販売を始めたBYDに至っては4,960台に過ぎません。つまり、中国車の脅威といっても欧州市場のシェアまだ2.8%で、その6割をMGが占めます(但し、EVに限るとシェアは8%と急上昇中)。※2:MGやポールスターは中国資本傘下でかつ全量中国で生産されており「中国ブランド車」と定義。
もちろん、20%のコスト優位があるとされる中国ブランド車のシェアが将来20%になるという予測もあって侮ることはできませんが、現状は「中国車の脅威は、事実というより理論上のもの」とANE紙のニック・ギッブス記者も書いています。