2023年9月26日、アジアを中心に2輪/3輪の電動バイクや充電器などを展開する電動モビリティカンパニー「テラモーターズ」が、「急速充電器1000基 無料導入」のプランを発表した。

急速充電器の利用者数は今後、増えることが見込まれる

電気自動車(EV)運用のためのインフラ整備に不安があるといわれている日本においても、新車販売されるEVのモデル数はここ数年で急速に増え、国産/輸入メーカーあわせて50車種近くにまで迫っている。

また実際の販売状況においても躍進しており、2022年は年間で約4.2万台だったのに対し、2023年は8月末の時点で約6万台(普通車約2.9万台/軽自動車約3.1万台)が登録/届出されている。今後、法人車両のEV化も進むことが予測され、勢いはさらに増すだろう。

画像: 高速道路のPA/SAをはじめ、道の駅など交通の要所に設置される急速充電器は増えている。

高速道路のPA/SAをはじめ、道の駅など交通の要所に設置される急速充電器は増えている。

また、急速充電器も確実に台数を増やしており、全国で約8995基(2023年3月時点/ゼンリン調べ)が設置されている。ただ、ここ5年で増えた数はわずか1600基ほどで、経済産業省が公表しているインフラ整備の目標「2030年までに3万基を設置」を達成できるようなペースではない。

さらに充電機器の経年変化や採算割れなどさまざまな理由により、2023年はすでに500基以上の急速充電器が閉鎖している。いまのままでは経産省がいう「ガソリン車並みの利便性を実現」するのは難しそうにも見える。

急速充電器の実働数は増えているものの、設置されてから年月が経っていたり、故障したまま放置されるなどのケースもある。

EV普及に向けた課題は、急速充電器の数だけではない

こうした充電環境については、さらにいくつかの問題点があるとテラモーターズの徳重徹 取締役会長は言う。

ひとつは急速充電器の性能が、最新EVのバッテリー容量に見合ってないということ。2022年5月に相次いで登場し、あえて小容量バッテリー(20kWh)を搭載した軽自動車規格のEV、日産サクラや三菱eKクロスEVであれば従来の急速充電器でも十分に対応できるだろう。

しかし、EVの普及が進む欧州や北米をはじめとして、アジアにおいても120kW〜150kW出力がスタンダードになっている。またアウディQ4 e-tronやBMW iX3などのように80kWhを超える大容量バッテリー搭載車も登場しはじめ、こうしたモデルにとって日本で平均的な40kW出力急速充電器は心許ない。

画像: EVの中には、100kWhオーバーのバッテリーを搭載するモデルもある。写真のBMW i7は105.7kWh。

EVの中には、100kWhオーバーのバッテリーを搭載するモデルもある。写真のBMW i7は105.7kWh。

また時間課金制も不公平感を生んでいるという。急速充電は一般的に、接続/充電した時間の長短に応じて料金がユーザーに請求される仕組みだ。充電器の出力や車種によって充電した電力量は違うのに、料金は同じという不公平感を生んでいるわけだ。

そしてもうひとつの課題が、集合住宅における普通充電器導入の制約だ。技術的に充電器設置が難しい機械式駐車場や、住民の合意が必要な集合住宅の居住者は、こうした充電環境が急速に進んでいかないことで、EVへの移行をためらってしまうのだ。

今回、テラモーターズが発表した「急速充電器1000基 無料導入」の新プランは、こうした問題点を解消するための一助にしたいという気迫を感じさせるものだった。

東京の街中に新たに設置される1000基の急速充電器の効果

急速充電器の数が増えない理由には、運営するオーナーにかかってくるコストの大きさがある。政府による補助金があるにしても、導入するためには基本的に1基あたり1000万円〜1500万円のイニシャルコストがかかり、さらにメインテナンスと電気料金などのランニングコストが大きな負担になる。

画像: テラモーターズの徳重 徹 取締役会長。駆動用バッテリーの大容量化や電気自動車販売台数の増加により、急速充電器の需要も右肩上がりに高まっていくと予測する。

テラモーターズの徳重 徹 取締役会長。駆動用バッテリーの大容量化や電気自動車販売台数の増加により、急速充電器の需要も右肩上がりに高まっていくと予測する。

そこでテラモーターズの新プランではイニシャルコストとランニングコストをゼロにするという。しかもランニングコスト ゼロは1年や2年など短期なものではない。現在あらゆる可能性を検討中だというが、5年/10年/リプレイスも含めて考えられている。ちなみに、家電量販店のコジマへの導入がすでに決まっているという。

またエンドユーザーへの請求は従来の時間課金制ではなく、従量課金制を導入する。独自のスマホアプリを介して、ガソリンと同じように1kWhあたりの料金となる。ただ、実際の価格がいくらになるのかについては今後の発表を待たなければならない。

そして設置される急速充電器は国産で、しかも出力は国際的なスタンダードを上まわる150kWだ(施設によっては90kWに変更できる)。これならわずか6分で100km走行分の電力を充電できるという。高速道路のPA/SAのように長距離移動の通過点ではなく、集合住宅や機械式駐車場利用者がより利用しやすい街中に設置することでEVの普及につなげたい考えだ。

前述のコジマをはじめとした家電量販店やショッピングモール、コンビニなどの商業施設、役所や地区センター、図書館などの行政施設での設置を進めていくという。

今回の「急速充電器1000基 無料導入」の新プランは、人口が多く、集合住宅の比率も高い東京都内で展開される。大阪や名古屋など、第二、第三のプランも検討するとしている。まずは課金制度の内容を含めて今後の動きに注目したい。

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