全国にSA/PAは884カ所ある
EV普及の話になると、俎上に上がるのがインフラについてだ。具体的には長距離移動で利用する高速道路、そのSA/PAにどれだけ急速充電器が用意されているのかが問題となる。
ただし、筆者の個人的な印象では、高速道路の主なSAのほとんどに急速充電器が用意されているように思っていた。ただし、その数は1基もしくは2基ほどで、「休日などでEVが殺到したら大変なことになるだろう」との思いもあった。
しかし、実際に高速道路のSA/PAに設置されている急速充電器は、2022年度末の時点で、全国511口(東日本高速道路・中日本高速道路・西日本高速道路・e-Mobility Power発表より)しかないのだ。
一方、全国のSA/PAの数は884カ所(2022年6月末、国土交通省発表)もある。内訳はSAが238カ所、PAが646カ所。つまり、急速充電器は全国すべてのSA/PAの数には足りないけれど、SAのみであれば、その2倍ほどが用意されているという数字だ。
ちなみに、NEXCO東日本(東日本高速道路)に「SA/PAにおける充電器設置の法則(ルール)」はどのようなものがあるのかと問い合わせてみれば、「電気自動車と急速充電器の普及状況及び交通動向等を踏まえ、高速道路における経路充電を目的として、一定間隔ごとの配置となるよう充電事業者と調整のうえSA/PAへ整備しています。」というコメントを得た。不足のないように調整しているというわけだ。
もちろん、238カ所のSAに対して、511口では「たっぷりある」と言えるものではないだろう。EV1台あたりの充電時間は約30分となれば、2台、3台と並べば、1時間以上の待ち時間がかかることもあるだろう。それでは、快適なロングドライブとは言い難い。
2年後には急速充電器を倍増
そんなことはNEXCO各社も当然理解しているはずだ。そのためNEXCO各社は、連名で2023年3月に「2025年度までにEV急速充電器を約1100口に増設します」と発表している。今後3年で2倍以上に急速充電器の数を増やそうという計画だ。
NEXCO各社はこれまで、2020年度に402口あったEV急速充電器を、2021年度末までに429口、2022年度末までに511口にまで増やしてきた。その増加スピードをさらに高めて、2023年度末までに666口とし、2年後の2025年度末までに約1100口に増加するというのだ。2020年度末と比較すれば、約2.7倍。2022年度末と比べても2倍以上の数字となる。
その増設の内容を見ると、まったく存在しなかったSA/PAへの設置は少数で、その多くは既存の設置数を増やすということになっている。これまで1口しかなかったSA/PAを、2口や4口、多いところは6口にまで増やそうという計画だ。
6口に増やすのは、友部SA(上り)、守谷SA(上り)、上里SA、蓮田SA(上り)、足柄SA、駿河湾沼津SA、静岡SA、諏訪湖SA、恵那峡SA、双葉SA、吉備SA、熊本SAといった大きなSAばかりだ。浜松SAと草津PA(下り)は、最大級となる8口が設置されている。一律に上下線ではなく、上りだけ、下りだけとあるのは、交通動向を踏まえながら調整している証だろう。
また、充電器自体も2台同時に充電可能なタイプや、それ以上の数に対応するマルチコネクトタイプを用意するなど、増加が予測されるEVへの準備を進める。さらには、高速道路の外に設置された急速充電器を使うことのできる高速料金制度(ETCの機能を使って、一旦、高速道路を出て、外の急速充電器を利用した後、一定時間内に高速道路へ戻れば、高速道路を降りていないという高速料金となる)も予定している。
EVと充電器は、鶏と卵の関係と同じで、どちらかに不足があると全体として増えることができない。高速道路における急速充電器の増設は、「EV普及のネックとなっているのがインフラだ」という懸念を若干でも払拭できることになる。充電器の増設にあわせて、EVも増加していくことが期待される。