クルマとスモールモビリティが道路を共有する旧市街の魅力
今週のミュンヘンは、日中の気温は20〜25度で空気は乾いており、気持ちの良い夏の陽気です。平日にも関わらず、旧市街はIAAモビリティショーに足を運ぶ市民や観光客で賑わっており、旧市街の道路は、路面電車とバスの公共交通機関と、自転車とeスクーターが分け合って利用しています。
子供を前輪のクレードルに乗せたママチャリやeスクーターが道路の真ん中を走り、車はその後ろをゆっくりと追走する様子を見ると、歩行者とマイクロモビリティを優先させているのがわかります。特に自動車の通行規制*がされているわけではありませんが、マリエン広場を中心に直径1キロ以内の旧市街には車が通れる道はあまりありません。
※ミュンヘン市では、中央環状道路(Mittierer ring)の内側は低排出ガス車(ディーゼルはユーロ5以上)のみ走行が許可され(low emission zone)、積載重量3.5トン以上の貨物車はこの環状道路より内側は通過禁止となっている(Transit ban)。
日本の都心の道路はクルマ中心の運用で、自転車で車道を走るのはかなり勇気が入りますし、eスクーターがこれから普及するとしても、どこをどう走るのかまだイメージしにくい状況です。時速6キロ以下なら一部の歩道を走れることになりましたが、歩道では自転車が歩行者にとって一番脅威と言われるように、より小回りが効き加速力もあるeスクーターを6キロ以下で安全に歩道を走らせるのは、実際はかなり難しいのではないでしょうか。
パリはオリンピックの開催される2024年に、セーヌ川沿いの中心部の1〜3区やその対岸のサン・ジェルマン通りの内側のクルマの通行を禁止する方針です。筆者は都市モビリティの専門家ではありませんが、東京でも都心部の道路の運用の仕方を少し変えて、渋谷や表参道、銀座などの路上でマイクロモビリティが安全に走れるようになれば、都市の景色や人の動きも変わって、魅力も高まるのではないかと思った次第です。(了)
●著者プロフィール
丸田 靖生(まるた やすお)1960年山口県生まれ。京都大学卒業後、東洋工業(現マツダ)入社。海外広報課、北米マツダ(デトロイト事務所)駐在をへて、1996年に日本ゼネラルモーターズに転じ、サターンやオペルの広報・マーケティングに携わる。2004年から2021年まで、フォルクスワーゲングループジャパン、アウディジャパンの広報責任者を歴任。現在、広報・コミュニケーションコンサルタントとして活動中。著書に「広報の極意−混迷の時代にこそ広報が活躍できる」(2022年 ヴイツーソリューション)がある。