中国メーカーのプレミアムEVは脅威か
もう一つのニュースは、BYDの上級ブランドのDenzaが導入され、その第一弾がD9という乗用ミニバンになることです。中国でもトヨタのアルファードタイプの人気は非常に高く、D9は発売からわずか6カ月で今年7、8月に30万元(約600万円)以上のミニバンセグメントで販売トップとなったそうです。欧州では比較的地味な印象のあるセグメントですが、ビジネスユースで販売が期待できるとの話でした。
実は、BYDのAtto3を今回フランクフルトからミュンヘンまで430kmのアウトバーンの高速移動にレンタカーで使用しました。その感想は別途書きますが、レンタカーステーションには何台ものAtto3やMG4が駐車していました。
BYDやMG、今回出展しているそのほかの中国メーカーのEVが欧州市場でどの程度の脅威になるのでしょうか。量販価格帯はある程度売れるとしても、プレミアムセグメントはまだ安泰という感じはありますが、デザインも洗練されているシールのAWDモデルは50,990ユーロです。この辺りがどの程度、プレミアムブランドの間に食い込んでいくかが、試金石になりそうです。
なお、ショー開幕の直前にMINIのEVや「ノイエ・クラッセ」のコンセプトカーを発表したBMWや、新EVプラットフォーム(MMA)を採用したCLAを前日に屋外の会場で発表したメルセデスのメッセホール内の展示は限定的なものです。
またフォードやテスラ、VWから出資を受けた小鵬(シャオペン)などは屋外会場のみです。こちらは無料で見られて中心街で人も集まるので、メーカーによってはそちらの方により力を入れています。こちらはまた、次回に様子をご報告したいと思います。(了)
●著者プロフィール
丸田 靖生(まるた やすお)1960年山口県生まれ。京都大学卒業後、東洋工業(現マツダ)入社。海外広報課、北米マツダ(デトロイト事務所)駐在をへて、1996年に日本ゼネラルモーターズに転じ、サターンやオペルの広報・マーケティングに携わる。2004年から2021年まで、フォルクスワーゲングループジャパン、アウディジャパンの広報責任者を歴任。現在、広報・コミュニケーションコンサルタントとして活動中。著書に「広報の極意−混迷の時代にこそ広報が活躍できる」(2022年 ヴイツーソリューション)がある。