電動キックボードに代表される超小型モビリティに関する法令が大きく変わる。2023年7月1日から改正道路交通法が施行され、従来の原動機付自転車(以下、原付)と軽車両の間に、「特定小型原動機付自転車」という区分が新設されるのだ。なにがどう変わるのか。

すべての電動キックボードが対象ではない

従来の道路交通法の区分では、軽車両は自転車(電動アシスト自転車含む)、人力車、馬車、リヤカーなどを指す。原付は原付バイク(電動バイク含む)やひとり乗りミニカーのほか、電動キックボードなどが該当し、保安基準を満たす部品の装着(※1)が必要となる。
※1:ヘッドランプ、テールランプ、ブレーキランプ、バックミラー、後部反射鏡、ウインカー、クラクション、番号灯ほか。

また現行法(2023年3月現在)の通行区分では、軽車両が通行できるのは車道および路側帯(普通自転車のみ一部の歩道も通行可)であり、原付は車道のみである。

さらに原付の運転には、原付運転免許証(もしくは普通免許など上位の免許。ひとり乗りミニカーの場合は普通免許以上)が必要であり、市区町村役場にて登録して交付されたナンバープレートの掲示義務、自賠責保険の加入義務、安全基準を満たしたヘルメットの着用義務も発生する。現行の電動キックボードも、原付に準拠している。

新設される「特定小型原動機付自転車」は以下のように定義されている。
■定格出力0.6kW以下の電動車
■最高速度を20km/h以下に制限する
(スピードリミッターが必ず装着されていること)
■全長190cm×幅60cm以内であること(普通自転車相当)
■原付に準じる保安基準に合致する部品(※2)が装着されていること。
■今どのくらいの速度で走っているかを示す速度表示灯(インジケーターの一種)を車体の前後に装着していること
※2:バックミラーや番号灯は除外されるが、安全基準を満たしたバッテリー(PSEマークなどの有無で適合を確認)を搭載していることが求められる。

この条件を満たしている電動モビリティなら、電動キックボードに限らず座席のついたミニサイクルのようなタイプでも、「特定小型原動機付自転車」として登録できるようになる。

さらに運行条件については、大幅に緩和された。
■16歳以上で免許証は不要
■ヘルメットの着用は努力義務
■20km/h以下で車道・路側帯走行、および自転車専用レーンの走行が可能(※3)
■6km/hを上限として一部の歩道で走行が可能(※4)
と定められている。
※3、※4:新たに車両区分の切り替えが認められ、車道/路側帯/自転車レーンでは最高20km/hの「車道走行車両モード」、歩道では最高6km/hの「歩道走行車両モード」に切り替えることができる。それぞれ車体前後に装着された最高速表示灯が車道/路側帯/自転車専用レーンを通行時には緑色で常時点灯、歩道走行時には緑色で点滅する。ただし、走行できる歩道は限られている(「普通自転車歩道通行可」の標識があるところ)ので、すべての歩道を通行できるわけではない。

「特定小型原動機付自転車」は文字どおり軽車両と原付の中間的な存在だが、原付と同じく自賠責保険の加入、ナンバープレートの装着は必須となっている。

また、従来型の電動キックボードは現在の条件(原付)のまま利用できるが、仮に20km/h以下に速度を抑えても免許証の携行やヘルメットの着用義務はそのまま、走行できるのは車道のみである。

新法が適用されるのはあくまで「特定小型原動機付自転車」だけで、すべての電動キックボードにあてはまるわけではない。

今回の改正は手軽な移動手段の普及促進、つまるところ将来のパーソナルモビリティ拡大を睨んだ規制緩和の一環である。これを機会に、電動キックボードではない新たな乗り物が誕生する可能性もある。

一方、交通法規をよく知らない(=免許を取得していない)のに、動力のついた乗り物を運行できるようになることに心配する声も根強い。

それゆえ、今後は学校などで交通安全教育や啓蒙活動を徹底する必要もあるだろう。今年夏以降、急激に増加すると思われる「特定小型原動機付自転車」の利用者モラルも問われることになりそうだ。

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