去る7月25日より、BMWが燃料電池車(FCEV)の市販に向けて「BMW iX5ハイドロジェン」の実証実験を日本でも開始した。国内ではいまひとつ盛り上がりに欠けるFCEVだが、実は海外ではEVと並ぶ次世代ゼロエミッションビークルとしてその実用化が加速している。その最新事情を解説する。(タイトル写真はBMW iX5ハイドロジェン)

最大の水素消費国は中国、クルマだけでなく新電源として普及へ

FCEVはもともと欧州が発祥であり、それをトヨタやホンダといった国産勢と韓国のヒョンデが実用化に漕ぎつけたというのが近年の構図だ。

しかし、実は世界最大の水素消費国は中国である。中国の水素需要はすでに約3300万トン/年であり、世界の総需要の実に3割近い(2023年4月:NEDO発表)。これが2060年には国内生産分だけでも約6000万トンに膨れ上がるという。

今後、FCEVの需要が膨れ上がったとしても、その需要増に応える潜在的な供給能力は世界一と言える。さらに新たな電源としての活用も政策に謳われており、自動車だけでなく“小さな発電所”として水素社会の構築を目指しているようだ。現状は化石燃料からの水素製造が主だが、再エネ由来のいわゆるグリーン水素への切り替えは急速に進んでいる。

中国での燃料電池車の販売はバスやトラックなどが中心で、現在はまだ乗用車はほとんどない。とは言え、中国政府の目標では2025年までに、燃料電池車5万台、グリーン水素製造年間10〜20万トンという数字が掲げられている。いまはまだ乗用車はEVが中心だが、ごく近い将来には潤沢に生産される水素とその充填ステーションが整備され、EVとFCEVが混在する社会に生まれ変わる可能性が高い。

国のエネルギー政策と密接に関係するFCEV

日本で市販されているFCEVは現在のところトヨタ「MIRAI」とヒョンデ「NEXO」のみ。トヨタは新型クラウンセダンにFCEVをラインナップし、2024年にはホンダがCR-Vベースの新型FCEVを発表予定だが、多くの日本メーカーはEVのトレンドをキャッチアップするのに精一杯というのが現状だ。

さらに電源としての活用も、さまざまな実証実験は行われているものの、政府の後押しは十分とは言えない。つい先日も水素基本戦略を6年ぶりに改正したが、数字や文言だけを整えても先行する中国や欧米に追い付くのは容易ではない。国のエネルギー政策の本質が問われるのが燃料電池の世界。日本はまだその方向性を見い出せていないのではないだろうか。

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