トヨタは自社のBEV(バッテリーEV)が「クルマ屋がつくるBEV」であることを繰り返し表明してきた。去る6月8日に開催された「Toyota Technical Workshop」では、車台やバッテリー戦略に加え、「知能化」の進展によって実現する近未来について具体的な技術の一端を公開した。そこには「クルマ屋が創るBEV」のアウトラインが見えた。

ドライバーの意思を読み取る次世代ステアバイワイヤ

自動運転に必須と言われるのが、ステアリングシステムと転舵輪が機械的に直結していないステアリングバイワイヤと呼ばれる技術(日産がスカイラインで実用化しているが、緊急時のバックアップとしてインターミディエイトシャフトは残されており、完全なバイワイヤ化ではない)。従来の方式だと、ステアリングホイールはギアボックスとメカニカルにつながっているので、車庫入れや切り替えしなどでは持ち替える必要がある。ステアバイワイヤでは、車速や操作スピードなどドライバーの意思を読み取ることで、電気信号に変換してタイヤの切れ角をコントロール。ハンドル操作量を大幅に低減する。またメカニカルな接続がないためハンドル配置の自由度が増すので、新しいモビリティへの拡張も期待されている。

画像: クルマが1台あれば、あらゆるタイプの乗り味をOTAによるアップデートで楽しむことができる。(写真はテスト車両)

クルマが1台あれば、あらゆるタイプの乗り味をOTAによるアップデートで楽しむことができる。(写真はテスト車両)

ナビゲーションの地図更新が即日に

現在、OTAで更新される3D地図の更新は6カ月に一度。これが毎日更新されるようになるとはにわかには信じがたいかもしれないが、次世代BEVが登場する2026年には実現する見込みだ。トヨタが移動体通信システムを通じて収集する車両運行データ(プローブデータ)は現状で25万台/日だが、これが3年後には125万台/日に増える見込み。この膨大なデータを活用して、3Dマップの解像度や情報量を飛躍的に向上させると同時に、更新頻度を6カ月に一度のペースから即日まで短縮する。

画像: 持ち替える必要がないので、ハンドルの形も自在。航空機のような操縦桿タイプはすでに中国向けbZ4Xで実用化されている。

持ち替える必要がないので、ハンドルの形も自在。航空機のような操縦桿タイプはすでに中国向けbZ4Xで実用化されている。

次世代自動駐車機能

登録した駐車パターンをべースに、自動運転技術によって、障害物などのイレギュラーな事態にも対応できる駐車技術を開発中だ。カメラとソナーで常に監視しており、障害物があってもそれを避けて自動駐車を継続する。

全貌は「ジャパンモビリティショー2023」で明らかに

「車台」、「バッテリー」、そして今回紹介した「知能化」。主に3つの視点で、トヨタのBEV戦略を眺めてきた。2026年までに150万台/年、2030年には350万台/年という大胆なBEVシフトを裏付ける技術群は、まだ実車は存在しないもののトヨタの大攻勢を予感させるものだ。

世界中でBEVシフトが加速し、異業種やスタートアップが続々と参入する現在の状況は、見方を変えればクルマのコモディティ化、白物家電化が加速しているともいえる。しかし、BEVといえどもクルマであり、操る楽しさ(“心揺さぶる走り”)は最大化されるべきであるというのがトヨタの考えだ。自動車会社として長年蓄積してきたノウハウ、いわば“秘伝のタレ”によって、絶妙に味付けされた「クルマ屋の創るBEV」は、白物家電化に一石を投じることになるだろう。

画像: 「ジャパンモビリティショー 2023」では2026年までに発売されるBEVスポーツカーの出展も期待できそうだ。

「ジャパンモビリティショー 2023」では2026年までに発売されるBEVスポーツカーの出展も期待できそうだ。

その全容は、2023年10月26日から11月5日まで東京ビッグサイトで開催される「ジャパンモビリティショー2023(旧・東京モーターショー)」で明らかにされるという。世界が感動のため息をもらすようなBEVの公開を期待して待ちたい。

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