サスティナビリティーが中心にある「EX30」
これに対して、ボルボのEX30は、EVシフトによってCO2排出量を減らすと言いながら、エネルギー消費の多い大型SUVを先行して導入してきた欧州プレミアムブランドの路線に一石を投じるモデルと言えそうです。全長4.2mほどのスモールEVといえば、プジョー「e-208」や同じステランティスグループのオペル「モッカ(Mokka)EV」、フォルクスワーゲンの「ID.3」などがありますが、プレミアムカーとしては、EX30がこのセグメント初のモデルといえるでしょう。
ボルボは、7日の発表に先立って何本かのプレスリリースを出していますが、その中でも注目されるのが、「全ての製造過程とライフサイクルにわたる排出量削減に取り組むことで、20万km走行におけるCO2排出量の合計を30トン(※3)以下に削減し、ボルボ史上最少のカーボンフットプリントを実現した」と表明していることでしょう。この数字は、「EVであるボルボC40とXC40と比較して25%の削減であり、2018年から2025年の間に車両1台あたりのCO?排出量を40%削減するという目標に向けて物事が順調に進んでいることを示している」と自信を見せています。※3:20万キロの走行で30トン以下というカーボンフットプリントの算出は、EU27の電源構成から充電用電力を使用した場合に基づく。
「クレイドル・トゥ・ゲート」のCO2排出量も算出
さらに、上流のサプライチェーンから自社の製造工程を経て販売店に届けるまでを意味する「クレイドル・トゥ・ゲート」のCO2排出量を18トンと算出しプレスリリースに明記していることも、これまでの新車の発表ではなかったことです。LCA(ライフサイクルアセスメント)では車両の素材から製造、使用をへてリサイクルや廃棄までの「クレイドル・トゥ・グレイブ(揺り籠から墓場まで)」を評価しますが、サプライヤーが、自社の上流から後工程に手渡す(ゲート)までの排出量をそれぞれ算出すれば、LCAでのカーボンフットプリントの把握が容易になります。
日本の自動車メーカーでは、車両の製造時と燃料製造を含めた走行時のCO2排出量を指す「ウェル・トゥ・ウイール(Well to Wheel)」がよく使われますが、欧米ではサプライチェーン全体の把握のため「クレイドル・トゥ・ゲート」や「ゲート・トゥ・ゲート」の概念が定着しつつあるようです。
また「EX30」は、車両が小型であることで鉄やアルミなどの主要材料の使用量が減るだけでなく、鉄とプラスチックの約17%、アルミの約25%にリサイクル材を使用してCO2排出量を減らしています。
シンメトリカルデザインに感じる未来
最近のボルボ車の人気の理由の一つは、そのインテリアデザインですが、「EX30」は、シンプルで清澄なデザインをさらに推し進めています。速度などの表示は、全て中央の大型センターディスプレイに集約し(テスラ方式)、パワーウィンドーのスイッチはドアトリムからセンターコンソールに移動、ドアスピーカーを廃してウィンドーシールド下端にサウンドバーというワイドスピーカーを設置するなど、操作スイッチ類を集約し、シンメトリカルなレイアウトを採用することで、部材点数や型(ツーリング)の量を減らしています。
車室内は、スカンジナビアデザインの真骨頂といえるエアリーで広々とした空間を演出しています。集約化(Centralization)のコンセプトに基づき、エアコンの送風口は、縦の二重スリット型をセンターディスプレイの両側に配置し、ダッシュボードを非常にすっきり見せています。全幅に限りがあるスモールカーですが、スピーカーやパワーウインドウスイッチがないので、ドアポケットにはラップトップPCや大型のウォーターボトルが入ります。
素材面でも、ダッシュボード下部のフレーミングやドアトリムは、窓枠のプラスチックの再生素材を使用したり、シート地は再生ポリエステル糸に北欧の松(パイン)のオイルを練り込んだ糸や亜麻(リネン)を使用するなど、随所にリサイクル素材を使っています。