茨城県常陸太田市が運行している自動運転バス「じょっぴー」は、再乗車希望率94.2%、クレームゼロと市民の足として定着してきたが、ルート拡充に必要な制度上の手続きのため、2026年5月20日より運行を見合わせている。市は7月末の再開を目指しているが、コストや制度面の課題は残されたままだ。

再乗車希望94.2%、クレームゼロ。市民の足になった「じょっぴー」

茨城県常陸太田市は、自動運転レベル4の認可を受けて運行する数少ない自治体のひとつだ。2017年から実証実験を重ね、2025年には自動運転EVバス「じょっぴー」を2台定常運行させる世界初の運用に成功。車両は半導体商社のマクニカが手がけるフランス発のEVシャトルで、マクニカが車両の供給から運行、遠隔監視までを一括して担っている。

画像: Navya Mobility社製のEVバス「EVO」は、乗務員を必要としない自動運転「レベル4」に対応している。

Navya Mobility社製のEVバス「EVO」は、乗務員を必要としない自動運転「レベル4」に対応している。

2025年2月18日からは、北回り7.7km、南回り7.0kmを各3便、2台体制で運行し、利用者は1万5000人を超えている。乗車した人からは好評で、常陸太田市が行った利用者4585人へのアンケートでは94.2%が再乗車を希望し、しかもクレームは一度も寄せられていないという。

一方、ほかの自治体では不満の声が上がるケースもあるようだ。

自動運転EVバスを導入するための実証実験では道路を一部占有して、関係者が安全性や走行の可否を検証しなくてはならない。そのため、普段からその道路を使っている住民は回避や迂回をすることになり、不満に感じることもある。

九州の自治体で実証実験を行ったときの事例を関係者から聞いた話では、自動運転車両へのあおり運転や危険な追い越しが相次ぎ、解決すべき課題が多く発生したのだという。

なぜ常陸太田市では自動運転が受け入れられたのか

「2017年から実証実験を繰り返していることが、地域住民の自然な受け入れにつながったと思います」と常陸太田市の担当者である黒羽さんは話す。この地域では2017年と2019年、そして2022年から現在に至るまで、実証実験を複数回行ってきた。

市街地のように住民も交通量も多い自治体とは異なり、実証実験を行なってきたのは中山間地域(ちゅうさんかんちいき/山間部からその周辺の地域)であることもクレームが出なかった要因として挙げられるものの、それよりも実証実験を重ねたことによる信頼性の蓄積や、自動運転に対する期待も積み重なり、好意的な受け入れにつながっているのではないだろうか。

画像: 低床かつフラットな床面が特長で、最大9名の乗客を乗せられる。

低床かつフラットな床面が特長で、最大9名の乗客を乗せられる。

地域住民の理解を得る工夫は車両選びにも表れている。常陸太田市の黒羽さんは、マクニカの車両を導入した理由のひとつをこう話す。「一般的な路線バスに似た形ではなくシャトルバス型にすることで、地域の子どもたちに、最新技術が搭載された車両であることを期待させ、興味を持ってもらい、体感してほしかった」

実際に車両を目の前にすると、想像していたよりも存在感がある。全長は約4.8mとトヨタ アルファードとほぼ変わらないが、高さは約2.7mとミニバンより70cmほど高い。そのうえ、車体に取り付けられたセンサー類により、実寸よりひと回り大きく見える。通常の車庫には収まらないため、市は専用の車庫を設けているほどだ。

運転席をのぞくと、ハンドルもアクセルペダルもブレーキペダルも見当たらない。あるのは、ゲーム機のコントローラーのような操作機器だけ。手動で動かす必要がある場面では、オペレーターがこれを使って車両を操る。

画像: 車内前方にオペレーターが操作する専用機器が設置されている。

車内前方にオペレーターが操作する専用機器が設置されている。

近未来的な車両とピンク色の目立つカラーリングも相まって、地域の子どもの関心を惹くことにつながっているのではないだろうか。あわせて、「ピンクの車両はゆっくり走る」という安全上の理解にもつながっている。

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