茨城県常陸太田市が運行している自動運転バス「じょっぴー」は、再乗車希望率94.2%、クレームゼロと市民の足として定着してきたが、ルート拡充に必要な制度上の手続きのため、2026年5月20日より運行を見合わせている。市は7月末の再開を目指しているが、コストや制度面の課題は残されたままだ。

「真のコストは車両ではなく人」補助金なしでは走れない現実

「自動運転であれば、車両にかかるメンテナンス費用のみで済み、運用コストは少ないのではないか」と考える人もいるようだが、実際には運用コストが嵩む。先進地であっても自動運転の運用は補助金なしで運行を続けるのは難しいのが実情だ。

常陸太田市では、自動運転バスの動力エネルギーに太陽光発電を活用してランニングコストの削減に取り組んでいる。では、どこに費用がかかるのだろうか。

「率直に言うと、人です。同乗オペレーターや遠隔監視の人員などに運行コストの半分程度かかっています」と黒羽さんは話す。

自動運転とはいえ、まだ人の介入なしでは運行できない。万一に備え、安全確認や車両操作などをするオペレーターが同乗する必要がある。さらに、遠隔監視の担当者が一時停止からの再発進や信号通過の許可を出す場面もある。常陸太田市では車両を2台運行しているため、運行時間中のオペレーター2名と監視センターの人員のための人件費が発生している。

こうした構図は、国の試算にも表れている。経済産業省が2025年2月に公表したモビリティDX検討会の事務局資料によると、シャトルバス型の自動運転サービスの費用は、現在1台あたり年間5420万円と試算されている。

内訳は車両購入費が44%ともっとも大きく、人件費30%、設備費6%と続き、残りは管制システムの利用料などの諸経費や保険・燃料費、点検・保守費となっている。車両購入費を除くと人件費は約54%となり、日々の運行にいかに人件費がかかっているかがわかる。

常陸太田市は、マクニカへ依頼する理由のひとつに「販売から運行、修理やメンテナンスまですべて一括でやってくれる」ことを挙げている。マクニカが担う範囲には、同乗オペレーターや遠隔監視を行う人員の配置も含まれる。

このように、自動運転によるコスト削減や交通インフラの確保が期待されるが、現場では厳しい状況が続いている。

自動運転レベル4の認可は7kmの内、わずか200m。立ちはだかる制度の壁

「じょっぴー」は運行開始以来、定常運行を続けてきた。しかし、2026年5月20日より運行を見合わせており、現在、街中で「じょっぴー」を見ることはできない。公表されている原因は、システムメンテナンスだ。

担当者によると、背景にはルート拡充に伴う認可の壁があるという。常陸太田市に誕生した大型複合施設へルートを広げるには、あらためて安全確認する必要があり、その対応のために運行を止めているとのことだ。

ルート拡充には、さまざまなステップを踏まなければならない。新しいルートに対して特定自動運行の許可を申請し、道路交通法上での認可を得、さらに道路の管理者や所轄の警察署と話し合い、安全対策を施す必要がある。

「じょっぴー」は約20km/hと低速で走行するが、それでも安全対策は欠かせない。常陸太田市では自動運転区間を示す看板の設置を行うほか、舗装面に注意喚起のペイントを施している。認可を得るには時間と労力がかかり、実際、常陸太田市が自動運行できる自動運転レベル4の認可を得られたのは、約7kmある運行区間のうちたった200mだという。

画像: 自動運転区間に設置されている注意喚起の看板。

自動運転区間に設置されている注意喚起の看板。

取材を通じて見えてきたのは、自動運転バスの運行エリアが拡大したといっても、それはあくまで操縦者が運転席に座っている必要がある自動運転レベル2にとどまり、全区間の自動運行となると、現行の枠組みでは当面難しいという現実だ。自動運転への期待が高まる一方、それを支える制度は、まだ現場に追いついていない。

人が運転しなくてもいい未来へ

こうしたコストや制度上の課題に対して黒羽さんは「AI技術が進化して自律的に運転する車両が登場すれば、人件費が1人分になる未来はあります」と前向きな見解を示す。

現在日本では、一定の規則に則って運行するルールベースの車両しか運行できない。だが、AIベースの車両が走れるようになれば、自動走行できる自動運転レベル4のエリアを拡大できるという。「先進的な取り組みを絶やさず、次の世代にも託していきたい。多くの人に知ってもらい、AI型の車両が登場したときに自然と導入できるような体制ができたらいいなと」

常陸太田市では、コスト面や自動運転レベル4拡大に課題があるものの、次の世代へとつないでいくために、自動運転の普及を進めていくとしている。運行見合わせが続いている「じょっぴー」も、7月末の運行再開を目指しているようだ。課題をひとつずつ乗り越える自治体の歩みを通じて、自動運転が少しずつ広がっていくことを期待したい。

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