2025年7月27日、スコットランド訪問中のトランプ大統領は、欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長と米国−EU間の相互関税および自動車関税が15%で合意したと発表しました。その数日前に合意した日・米の関税率がそのまま採用されて8月1日の交渉期限前に決着したことに大方の関係者は安堵しましたが、文書化された合意内容の発表はなく、不透明な部分が残るのは日・米のケースと同様です。夏休み前に不安定要因が取り去られたことは歓迎されるものの、細部が不透明な合意についてはまだ「?」が残されています。

疑問2、不透明な部分が多い日米関税合意

では、EUに先駆けて関税15%で合意し、他国との交渉のベンチマークとなるといわれた日米の合意についてはどうでしょうか。4月以降に25%の自動車関税(従来の2.5%と合わせ27.5%)と同率の相互関税を課された日本は、対米累積投資額ナンバー1の実績や自動車産業の現地雇用の貢献などを訴えて、当初は自動車関税撤回を目指して交渉していましたが、それは到底不可能とわかり、双方が折り合えるギリギリの線が15%だった模様です。日本側は10%まで下げたかったようですが、その数字ではトランプ政権が飲めなかったのでしょう。

今後の対米投資も、日本の対米投資残高(8192億ドル)の3分の2に上る5500億ドル(約80兆円)まで積み上げさせられ、その中身も、「大統領の指示する分野に日本が投資し、利益の9割を米国が得る(トランプ大統領のSNS)」とまるで日本が巨額の札束を上納するような言い方ですが、日本政府は「政府系金融機関分は10%程度、9割は民間企業による」と説明し、赤沢亮正経済財政・再生相は「対米投資の枠組みのうち政府出資はせいぜい1〜2%」と発言するなど内容に大きなギャップがあります。また、米ウォールストリートジャーナルは、この投資は米政府直轄の「政府系ファンド(fund)」に対して行われる可能性を報じており、米ホワイトハウスの「ファクトシート」にも「日米の新たな投資手段(new investment vehicle)」と表現されていますが、日本政府からは「ファンド」を示唆する言葉は出ていません。

また、「日本は自動車とコメを開放する」という点についても、日本政府は米国メーカー車を追加試験なしに輸入可能とすると認めましたが、そうすると、従来、自動車の安全基準や技術認証においては欧州と足並みを揃えてきた日本にとって、独自の認証制度の存在を左右しかねない例外的な措置となります。特に、歩行者衝突安全保護や衝突被害軽減ブレーキ(AEB)については米国では現在規制が実施されておらず、日本の道路環境においてクルマ対歩行者(および二輪車)の事故が多いことを考えると不安要因です。

画像: 米国には歩行者衝突保護の安全規制がなく、AEBについては昨年ようやくルールが発表された(施行は2026年以降順次)。写真は「自動車事故対策機構(NASVA)」の公表動画より。

米国には歩行者衝突保護の安全規制がなく、AEBについては昨年ようやくルールが発表された(施行は2026年以降順次)。写真は「自動車事故対策機構(NASVA)」の公表動画より。

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