ロボタクシーの先陣争いに加わるVW
ロボタクシーで先行するウェイモは運行地域を急ピッチで広げつつあり、ワシントンD.Cやニューヨークでもサービスを始める計画です。日本でも日本交通と提携し、今春から東京でデータ収集のためのテスト走行を開始しました。オースティンで稼働を始めたテスラが、今後どの程度のペースで運行地域を拡大できるかは未知数ですので、「規模拡大（scale）の段階に入った」というウェイモがリードしているというのが大方の見方です。
またAmazon傘下のZOOXも、カリフォルニア州ヘイワードにロボタクシー専用車の工場をこのほど完成させ、今年中にラスベガスで商業運転を開始する予定です。ライドシェアの巨人ウーバー（Uber）も、米国ではウェイモと提携、英国では自動運転システム開発スタートアップのWayveと提携し、海外展開に踏み出しました。
自動車メーカーでは、かつてのような「完全自動運転一番乗り」を目指した競争は下火となり、GMがウェイモの対抗馬だったクルーズ（Cruise）を昨年解体した後は、自動運転「レベル4」の車両を開発してロボタクシー事業にも手を伸ばす大手自動車メーカーはVWとヒョンデくらいです。VWのモビリティサービスは、MaaSを進めるドイツや欧州の都市ではニーズが高いでしょうし、「ワーゲンバス」の伝統をひくID.Buzz の自動運転シャトルは米国でも目を引くことでしょう。自動運転システムの開発では、AIを駆使するNVIDIAやテスラなど新興勢力の「AV2.0」に目を奪われがちですが、ADASの老舗のモービルアイと組んだVWのMaaSに向けた取り組みも期待できそうです。
付記：テスラのロボタクシーの印象
オースティンで始まったテスラのロボタクシーの動画がさっそくYouTubeやXに何本もアップされています。1回乗車あたり4.2ドルですが、助手席に同乗したスタッフとともに市街地を22分走行した映像では、左折レーンで逡巡し、対抗車線に侵入しながら元の車線に戻ろうとして、後続車からホーンを鳴らされる場面（7分10秒〜）があったり、制限速度35マイル／hのところを常時数マイルオーバーでクルマの流れに合わせて走行するなど、米国道路安全局（NHTSA）から早くも目をつけられているようです。
また別のシーンでは、左折して店舗の駐車場に入ろうと中央レーン入ったSUVが、途中で気が変わって進行車線にフラフラと戻ってきたため、助手席スタッフが思わずハンドルに手を伸ばそうとする場面もありします。しかしここでは、モデルYは上手に減速してスタッフの介入は不要でした。（動画の15分過ぎ）
テスラのイーロン・マスク氏は、ロボタクシーデビューを「大成功（Super Congratulations！）」と自賛し、ウオール街のアナリストも好感を持って迎えたのか、週明けの株価は8％上昇しましたが、この動画を見る限り、レガシー自動車メーカーなら間違いなく運転席にドライバーを乗せているでしょう。
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youtu.be●著者プロフィール
丸田靖生（まるた やすお）1960年山口県生まれ。京都大学卒業後、東洋工業（現、マツダ）入社。海外広報課、北米マツダ（デトロイト事務所）駐在を経て、1996年に日本ゼネラルモーターズに転じ、サターンやオペルの広報・マーケティングに携わる。2004年から2021年まで、フォルクスワーゲングループジャパン、アウディジャパンの広報責任者を歴任。現在、広報・コミュニケーションコンサルタントとして活動中。著書に「広報の極意−混迷の時代にこそ広報が活躍できる」（2022年ヴイツーソリューション）がある。
