2025年4月23日、上海モーターショーで世界初公開された新型レクサスESは、2026年春をめどに日本・米国・欧州・中国ほかグローバルで販売開始される。レクサスによる次世代電動車ラインアップの先陣を切るモデルでもある。最新の技術と機能が目白押しだが、それを実現する「ある事実」についてはほぼ触れられていない。実は、トヨタが開発している車載OS「アリーンOS(Arene OS)」をはじめて搭載した車両である可能性が非常に高い。つまり、トヨタ/レクサス初の本格SDVだ。(タイトル画像:新型レクサス ES350e)

※車載OS:知能化が進むクルマの「頭脳」にあたるソフトウエアの基幹プラットフォーム。ビークルOSと同義。
※SDV:Software Defined Vehicle。ソフトウエアを無線通信(OTA=Over The Air)によって更新していくことで、購入後も機能と価値を継続的に維持または高めることができるクルマおよびその設計思想のこと。

デザインだけではない。すでに暗示されていた新型レクサスESの革新性

新型ESのデザインは、ジャパンモビリティショー2023(JMS2023)に出品されたコンセプトカー「LF-ZC」にインスピレーションを得ているという。改めて見比べてみると、形こそ異なるがデザインモチーフはほぼ共通している。その点では、LF-ZCこそ新型レクサスESの雛型だったと言えなくもない。

画像: 写真はES350e。LF-ZCをベースにした市販車は2026年に市場導入を予定していることが明言されていた。

写真はES350e。LF-ZCをベースにした市販車は2026年に市場導入を予定していることが明言されていた。

一方、今回の上海ショーで発表された新型ESには、JMS2023で開示されていた「独自のブランド体験」や「現代のライフスタイルを豊かにするサービスを提供」を具現化した機能が盛り込まれている。その代表的な機能として紹介されたのが以下の2つだ。

・レスポンシブ ヒドゥン スイッチ(Responsive Hidden Switches):物理スイッチを内装に同化させることで、機能性と上質なデザインを両立した世界初の技術。

・センサリー コンシェルジュ(Sensory Concierge):イルミネーションや空調、芳香などの連動により、レクサスならではのパーソナライズされた体験価値を提供する。

この2つの機能は、JMS2023で以下のように紹介されている。

画像: インパネには各種スイッチが配置されている。手をかざすとスイッチのアイコンが浮かび上がる物理スイッチだ。

インパネには各種スイッチが配置されている。手をかざすとスイッチのアイコンが浮かび上がる物理スイッチだ。

「Digitalized Intelligent Cockpitの採用で、必要な機能を必要なタイミングで直感的に操作することが可能となり、運転に没入できる操作デバイスとしました。新たなソフトウエアプラットフォーム『Arene OS』の採用により、先進安全技術やマルチメディアをはじめ、時代の進化に合った機能を順次アップデート可能(OTA化)です。さらに走る、曲がる、止まるといった基本性能においても、ドライバーごとにパーソナライズされた乗り味の提供を行うことで、お客様にとっての真の愛車をハードウエアとソフトウエアの両輪で目指してまいります」

上記のとおり、2つの機能を実現するのが「Arene OS」だという。この独自の車載OSは、2026年に発売するグローバルモデルから搭載することが謳われていたのだが、今回の発表ではほぼ触れられていない。唯一の例外が、以下の欧州向けプレスリリースの片隅に記されていた。該当部分を抜粋しよう。

Where Intelligence is concerned, the model benefits from technology innovations such as the Lexus-first「Hidden Tech」switches − made possible by Lexus Arene software platform – and the latest sophisticated multimedia and safety systems.(Areneソフトウエアプラットフォームによって可能になったレクサス初の「Hidden Tech」スイッチや、最新の洗練されたマルチメディアおよび安全システムなどの技術革新の恩恵を受けています。)

そもそもArene OSとはなにか?

Arene OSとは、トヨタとウーブン・バイ・トヨタが共同で開発を進めている車載OS(ビークルOSとも言われる)の一種だ。昨今の技術潮流はクルマの知能化=SDV(Soft Ware Defined Vehicle)だが、その根幹であり頭脳となる基本ソフトウエアが車載OSである。Arene OSを搭載することで、さまざまな機能が統合制御される。さまざまなソフトウエア/アプリケーションの利用が容易になるとともに、OTA(Over The Air:無線通信)によってつねに最新の状態にアップデートされる。

たとえば、カーナビゲーションの地図や自動運転技術も含めたADAS機能がつねに最新版にバージョンアップされる。また、日々進化するAI関連の将来技術の実装も容易になるなど、クルマの進化やそもそもの作り方を大きく変える可能性がある。

過日にはトヨタとNTTとAI運転支援技術の共同開発が発表され、米Waymoとの提携も発表された。その基盤ともなるのが、Arene OSである。

画像: 2025年に発表、2026年に登場する次世代EVから実装が始まる予定と告知されていた「Arene OS」。計画は順調に進んでいるようだ。

2025年に発表、2026年に登場する次世代EVから実装が始まる予定と告知されていた「Arene OS」。計画は順調に進んでいるようだ。

メルセデス・ベンツ、BMW、ホンダをはじめ、独自開発の車載OSとそれによるSDV化を前面に打ち出す自動車メーカーが増えている。それに比べると、今回のレクサスの発表はあくまで控えめな印象だ。

Areae OSの全貌は今秋開催されるJMS2025で明らかに

新型ESの国内発表は、2025年10月のジャパンモビリティショー2025となる。おそらくその前後のタイミングで、Arene OSの全貌とそれが可能にするさまざまな機能や新しい価値・体験がより具体的に紹介されるはずだ。もちろん、新型ESで実現する従来とは異なる移動体験も紹介されるだろう。

さらに言えば、レクサスESに続いてArene OSを搭載するトヨタブランド車の紹介もあるはず。自動車業界は内外ともに想定外の事態に見舞われているが、トヨタ/レクサスは次世代に向けて着々と歩みを進めている。

画像: 多機能でありながらテスラ車のようにすっきりまとめられたインテリア。Arene OSの恩恵だろう。

多機能でありながらテスラ車のようにすっきりまとめられたインテリア。Arene OSの恩恵だろう。

<参考:新型レクサスESプロトタイプ主要諸元>

■ES300h(ハイブリッド)[FWD/AWD]
・全長×全幅×全高:5140×1920×1555mm
・ホイールベース:2950mm
・車両重量:1785-1840kg
・エンジン:2L直4[FWD]※/2.5L直4[FWD/AWD]
・システム最高出力:145kW(197ps)[2L FWD]/148kW(201ps)[2.5L FWD/AWD]
・0→100km/h加速:9.4秒[FWD]/8.3-8.5秒[AWD]
※2L直4エンジンはFWD車のみに設定

■ES350h(ハイブリッド)[FWD/AWD]
・全長×全幅×全高:5140×1920×1555mm
・ホイールベース:2950mm
・車両重量:1820-1935kg
・エンジン:2.5L直4[FWD/AWD]
・システム出力:182kW(247ps)[FWD/AWD]
・0→100km/h加速:7.8-8.0秒[FWD/AWD]

■ES350e(EV)[FWD]
・全長×全幅×全高:5140×1920×1560mm
・ホイールベース:2950mm
・車両重量:2105-2185kg
・システム出力:165kW(224ps)
・0→100km/h加速:8.9秒
・航続距離(CTLC):約685km

■ES500e(EV)[AWD]
・全長×全幅×全高:5140×1920×1560mm
・ホイールベース:2950mm
・車両重量:2205-2285kg
・システム出力:252kW(343ps)
・0→100km/h加速:5.9秒
・航続距離(CTLC):約610km

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