黒船BYDですら日本の軽市場を攻略するのは容易ではない
とはいえ、BYDの軽EVも当初は苦戦が予想される。価格の問題はさておき、最大の課題はブランドの認知度、販売拠点の数と販売方法だ。例のCMの効果もあって、都市部でBYDの認知度は高まっている。既存ラインナップは、絶妙な価格設定によりコストパフォーマンスが異様に高いブランドとして認知されてきた。
ただ、BYDの実店舗(協力店も含む)の数は2025年末までに100店舗を目標としていること、またその多くは都市近郊に集中していることから、大きな販売台数を記録するためのハードルが存在するのは事実だろう。
さらに軽自動車は、ディーラーだけでなく整備工場など地元に密着した独自の流通網が成立している。最近では維持費の安さから都市近郊に住む若年層や高齢世帯のファーストカー需要も取り込んでいるが、依然としてマジョリティは地方におけるセカンドカー需要であり、それゆえに「シェア4割超」という巨大な市場が形成されている。スズキとダイハツを一緒に販売している整備工場の看板を見たことがある人も多いだろう。比較的都市部に近い立地でも、全車・全ブランドの軽自動車を扱う大規模な「軽専門店」も増えている。
そのあたりの事情や難しさはBYDも十分承知しているからこそ、「軽自動車ビジネスに豊かな経験を持つ人材の募集を行います」と専用の求人サイトを開設する。これがうまくいくかどうかは、フタを開けてみなければわからない。
いよいよ日本車の本丸に攻め込んでくるBYD。かつて海外メーカーが、ここまで軽自動車市場への参入に力を入れたことはない。果たしてどんな軽自動車が上陸するのだろうか。日本の自動車メーカーも対抗策を打ち出してくるはずであり、2025年秋のジャパンモビリティショーでは日中ブランドによる激しい鍔迫り合いが見られるに違いない。