2025年4月24日、BYDオートジャパンは2026年後半に日本の軽EV市場に参入すると発表した。国内の軽自動車規格に準拠して専用設計された乗用車タイプで、当面のライバルは、日産 サクラ/三菱 eKクロスEV、そしてホンダが2025年度投入予定のN-ONEベース新型軽乗用EVなど。軽自動車市場は国内販売台数の4割を超えるものの、コストにシビアで販売ルートも独特だ。これら難題にBYDはどのような戦略で臨むのか。そして迎え撃つ国内メーカーの動向はいかに。(タイトル画像はイメージ)

「ガラ軽」攻略の鍵を握るのはLFPリチウムイオンバッテリー

そもそも、なぜそんなことが可能なのか。それは、BYDが世界シェア第2位のバッテリーサプライヤーでもあることが大きく影響している。EVの製造コストの3割から4割がバッテリーだと言われており、それを自社生産しているのは途方もない強みとなる。

しかもそれは、高価なレアメタルを使用しないLFPリチウムイオンバッテリーだ。さらにセルを直接パック化して車体の構造部材とするCTB(Cell to Body)技術も採用しており、ここでも大幅なコストダウンと量産効率の向上が図られている。つまり価格決定の自由度が、国内メーカーとは比べものにならないほど高いことになる。

画像: BYDのLFPリチウムイオンバッテリーセルは細長い独特な形状から「ブレードバッテリー」と呼ばれている。

BYDのLFPリチウムイオンバッテリーセルは細長い独特な形状から「ブレードバッテリー」と呼ばれている。

日本メーカーもLFPバッテリーの自社開発を急ぐも、実用化は早くても2027年以降

とはいえ、日本勢も独自のLFPリチウムイオンバッテリーを開発中である。日産は2028年度の実用化を目指し、まずは次世代のサクラに搭載予定。販売価格の低減に直結するコストをおよそ30%引き下げる。車両価格も大幅に引き下げられて、現在のガソリンターボ軽乗用車と変わらないレベルまで下がるだろう。CEV補助金が継続されていれば、ガソリンターボ軽乗用車より手ごろになるかもしれない。

トヨタは豊田自動織機と共同でバイポーラ型LFPリチウムイオンバッテリーの開発を進めており、こちらも2026年〜2027年に量産車へ搭載しはじめる予定だ。航続距離を20%増やす一方で、コストは40%の低減を見込んでいる。EVだけでなくHEVやPHEVの乗用車にも搭載されて、次世代電動車の核となるバッテリーという位置づけだ。これはスズキやダイハツにも供給されるだろう。

ホンダは具体的なスケジュールを公表していないが、当然、水面下で独自に(もしくはパートナーと共同で)LFPを開発しているはず。まずは二輪車への搭載を優先していくようだ。

画像: 日産は次世代サクラで国内開発・生産のLFPバッテリーを搭載。約30%のコスト低減で購入しやすいEVの提供を目指す。

日産は次世代サクラで国内開発・生産のLFPバッテリーを搭載。約30%のコスト低減で購入しやすいEVの提供を目指す。

つまり着々と研究開発は進んでいるものの、当分のあいだ国産メーカー勢は高コストなNMCリチウムイオンバッテリーを使わざるを得ない。しかも、軽自動車はすでにぎりぎりの価格設定がなされており、値下げは容易ではない。BYDはまさにこの虚を突いてくる。

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