交通利便性のさらなる向上と公共交通の利用をするEVバス
茨城県の常陸太田市は、多様な移動ニーズへの対応、環境に配慮した交通システムの構築、次世代技術との融合による魅力あるまちづくりの推進に取り組んできた。自動運転バスの運行もその一例だ。2023年2月には、株式会社マクニカおよび関係各社と連携して自動運転EVバスの実証実験を実施。その2024年2月からは、マクニカが提供するNavya社製自動運転EVバス「EVO」の定常運行（通常運行）を開始している。
この定常運転開始から1年が経過した2025年2月、かねてより要望の声が寄せられていた常陸太田駅と鯨ヶ丘方面にバス停を増設、走行ルート・運航距離の延長を図るとともに、EVバスをもう1台追加することになった。同一エリアの公道で2台のEVバスが定常運行するのは世界初となる。
さらに利用料金は無料。従来の公共バスのように発車時刻にバス停に並んで乗車する。ただし、乗車定員は最大9名で予約もできないため、満席の場合は乗車できない。
1日6便（南回り、北回り各3便運航）。常陸太田市役所、常陸太田駅や常陸太田市東部地区を周遊するルートを走行する。
愛称は「じょっピー」。ピンクのボディカラーが目印
1台目と同じく、車両はマクニカが提供するNavya Mobility社製のEVバスEVO。全長4780mm、全幅2100mm、全高2670mmのコンパクトなシャトルバスで乗車人数は最大9名だ。最高速度は18km／hだが、実際の運行時は平均15km／hほどに抑えられる。1回の充電でおよそ9時間（100kmほど）の運行が可能だ。
2台のEVバスは、地元で「じょっピー」と呼ばれている。常陸太田市が行った自動運転車両愛称募集において全国から寄せられた131件の応募の中から選ばれた。常陸太田市のマスコットキャラクター「じょうづるさん」の「じょ」と、「ハッピー」の「ッピー」、バスの色も「ピンク」だったことにちなんでいる。
常陸太田市の公式マスコットキャラクター「じょうづるさん」（画像出典：常陸太田市公式HP.）
自動運転EVバスの運行オペレーションは上述のマクニカが担当。自動運転走行に必要なデータ取得・セットアップ、技術的資料作成、関係各所との調整対応、運行体制の構築を提供している。さらに車両の走行データをマクニカ製の遠隔運行管理システム「everfleet」（※）に連携させることで、自動運転EVバスの走行情報をリアルタイムに離れた場所で確認することを可能にしている。
※everfleet：マクニカが開発した自動運転車両用遠隔監視システム。車両情報・データを統合して一元的に可視化し、信号機などの交通インフラと協調した外部データとの連携を可能にしている。さらに遠隔地からでも多種多様なモビリティを同時に群管理することや運行時の異常をシステムによって自動的に検出・通知することができるため、オペレーションの省人化も実現する。
全国各地の実証実験や定常運行でお馴染みのNavya Mobility社製「EVO」。乗務員を必要としない自動運転「レベル4」に対応する最新モデルだ。
さらに地域住民向けには、2台の自動運転EVバスのリアルタイムな位置情報や車内混雑情報、バス停・周辺店舗情報等を一元的に可視化した「常陸太田デジタルマップ」を常陸太田市行政情報アプリ「じょうづるさんナビ」をとおして提供するなど、利用者本位で制度設計されている。
運行状況は常陸太田市行政情報アプリ「じょうづるさんナビ」上の常陸太田デジタルマップで確認できる。
なおマクニカでは、同車両2台を同一エリアで運行することでより多くのデータ収集を行い、2025年度のレベル4運行を目指すとしている。また今後も、各自治体への自動運転EVバス導入をとおして、デジタルマップや自治体アプリとの連携、地域全体の情報提供やMaaS事業を積極的に取り組み、持続可能な街づくりの構築に貢献してことを目標にしている。
全国の自治体で自動運転バス（レベル2）の導入がようやく始まりつつあるが、さまざまな課題解消にむけて今回の常陸太田市の取り組みは多くの情報を提供してくれるはず。その行方に日本全国の自治体が注目しているはずだ。
