2025年2月20日、メルセデス・ベンツがドイツ3大自動車メーカーのトップを切って2024年の決算を発表するとともに、投資家デー(キャピタルマーケットデイ)を開催しました。2024年の業績は、売上高が1456億ユーロ(23兆3000億円、前年比−4.5%)、税引き前利益(EBIT)が136億ユーロ(2兆2000億円、前年比−30.8%)の減収減益でしたが、2025年発売の新型CLAを皮切りに、2027年までに30車種以上を投入すると同時に、生産能力の10%カットを含むコスト削減により、8%に低下した乗用車部門のROS(売上高利益率)を二桁に回復する計画です。また、長期的なEVシフトには変更ないものの、エンジン搭載車(ICE)にも継続投資を行い、EVと電動化したICEの両輪で臨むことが明らかになりました。(タイトル写真:4週間後に発表される新型CLAとメルセデス・ベンツのマーカス・シェーファー開発担当取締役)

トランプ関税の影響は利益の1%程度?

政治や規制の影響についても説明がありました。2025年から厳しくなるEUのCO2排出量基準は、達成できないことが予想されることから、提携先である吉利汽車とプーリング(pooling)することで罰金を回避すると決めています。また、2026年秋からのEuro7に対応した新たなパワートレーン開発も行なっています。

トランプ大統領が表明した相互関税は、もし米国がEUと同等の輸入関税10%をかけた場合(現在は米国への乗用車の輸入関税は2.5%)、利益への影響は1%程度であるとCFOのハラルド・ヴィルヘルム氏は述べました。

メルセデス・ベンツは、主要市場における販売に対する現地生産比率を7割以上に引き上げる方針で(欧州と中国はすでに8割)、GLCの生産を欧州からGLEやGLSを生産する米国アラバマ州の工場に移管する可能性も示唆しました。ドイツ国内の生産能力は10万台削減するものの、工場閉鎖は行わず、自然退職やシフト削減でこれを達成する計画です。

画像: 2022年に米国アラバマ工場でEQS SUVの生産を開始したが、米国での販売が伸び悩み2026年までにドイツ工場に移管する予定。

2022年に米国アラバマ工場でEQS SUVの生産を開始したが、米国での販売が伸び悩み2026年までにドイツ工場に移管する予定。

このように、向こう一年は厳しい経営環境が続くものの、その先は過去最大の新車攻勢とMB.OSなどによるユーザー体験の向上で、「ラグジュアリー×テック」ブランドとしてリードしていく戦略に自信をみせた会見でした。GLAやGLBなどのエントリーセグメントで販売台数を増やしてきた過去から、トップエンドモデルシフトする途上にあるメルセデス・ベンツは、EV戦略の修正を行ない、富裕層へのアピールを強化することで、その収益力を強靭化しそうだと思わせる内容でした。(了)

画像: サウジアラビアが首都リヤド郊外に建設中の巨大娯楽文化施設「キディヤシティ(Qiddya City)」にはF1やMoto GPを招致するレーストラックも併設され、ここに世界最大級のメルセデス・ベンツAMGエクスペリアンスセンターが建設される。

サウジアラビアが首都リヤド郊外に建設中の巨大娯楽文化施設「キディヤシティ(Qiddya City)」にはF1やMoto GPを招致するレーストラックも併設され、ここに世界最大級のメルセデス・ベンツAMGエクスペリアンスセンターが建設される。

●著者プロフィール
丸田 靖生(まるた やすお)1960年山口県生まれ。京都大学卒業後、東洋工業(現マツダ)入社。海外広報課、北米マツダ(デトロイト事務所)駐在をへて、1996年に日本ゼネラルモーターズに転じ、サターンやオペルの広報・マーケティングに携わる。2004年から2021年まで、フォルクスワーゲングループジャパン、アウディジャパンの広報責任者を歴任。現在、広報・コミュニケーションコンサルタントとして活動中。著書に「広報の極意−混迷の時代にこそ広報が活躍できる」(2022年ヴイツーソリューション)がある。

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