「水素エネルギーへの移行は将来の世代のためのものである」という信念。
韓国では現在、約4万台の水素自動車(FCEV)が走っているという。水素ステーション数は197カ所で、日本の166カ所、アメリカの100カ所に比べても多く、水素先進国であると言えるだろう。そんな韓国の水素ビジネスはヒョンデが牽引している。
日本でのヒョンデのFCEVと言えば2022年からNEXO(ネッソ)が導入されているが、韓国では2008年からFCEVがリリースされている。NEXOは第2世代目のスタックを搭載しているが、2014年10月31日、ヒョンデモータースタジオ高陽(ゴヤン)で水素をエネルギー源とする第3世代のスタックを搭載したFCEVのコンセプトカー「INITIUM(イニシウム)」が発表された。
ちなみにイニシウムとはラテン語で「始まり」、「最初」を意味する。この次世代FCEVの市販モデルは、2025年前半に発表予定で、ヒョンデが27年間にわたり開発した水素技術をすべて投入、これは持続可能な水素社会の実現への明確な回答だという。
イニシウムのデザインは、SUVらしさに溢れている。大胆なボディラインとキャラクターは都市生活での便利な機能とアウトドアでの走行性を表現、さらに頑丈さと洗練がバランスよく実現されている。ホイールの21インチと頑丈なルーフラックがこのモデルに魅力を加え、さまざまなライフスタイへの対応が予想できる。
水素をエネルギーにするFCEVの最大メリットは、⻑い航続距離だ。ヒョンデは、イニシウムに大型水素燃料タンクを装備して航続距離を最大化した。スタックの出力とバッテリー容量は従来より増え、最高出力150kWの電気モーターを採用している。さらに転がり抵抗の低いタイヤの採用や空気抵抗を低減したホイールの装着により、航続距離は650km以上を目標にしているという。
イニシウムは、ファミリー向けのSUVにふさわしい広々とした車内スペースとバーサティリティ(多用途性)を持ち、後部座席の広いリビングスペースや大きくリクライニングできる機能、そして快適な乗り心地を実現しているという。ワイドなボディに加え、大きく開くリアドアは、後部座席の乗り降りに配慮したものだ。
FCEVは、水素で発電した電気を持ち運べることも特徴である。イニシウムも発電して貯めた電気をV2L機能により、家電やデバイスに給電することができ、移動の手段としてだけでなく電源車としても活用できる。
ヒョンデは、水素は次世代の人たちのためという信念を持っている。このイニシウムもその強い意志の現れだと言えるだろう。