2024年の収益を大幅下方修正
業績好調に見えていたステランティスが2024年9月30日、同年の利益率が半減してフリーキャッシュフローが50〜100億ユーロの赤字となると発表し、株式市場に衝撃が走りました。というのも、同社が2024年2月に発表した2023年度の決算では、1895億ユーロ(30.3兆円)の売上と186億ユーロ(2.9兆円)の純利益という過去最高の業績あげていたからです。
タバレス氏はかつてルノー・日産グループでカルロス・ゴーン氏の右腕として辣腕を振い、2014年からはプジョー・シトロエン(グループPSA)の会長として同社の業績回復を牽引。2021年にはフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)との合併を成し遂げて年間600万台の世界第4位の自動車グループを誕生させ、そのトップの座についた目覚ましい経歴の持ち主です。
コストカッターとの評判を持ち、収益力を向上させる手腕で株式市場の信頼を得て、2024年3月にステランティスの株価は27ユーロと過去最高値をつけていました。ピークから半年余りで急降下(12月9日の終値は12.9ユーロ)した原因は何なのでしょうか。
夏頃から報道されていたのは、米国でピックアップトラックが人気のラム(Ram)ブランドや若年層からも支持されるジープ(Jeep)の販売が低迷して在庫を積み上げ、販売店が苦境に喘ぐ現状でした。
コロナ禍や半導体不足で売り手市場の間、相次ぐ値上げを行い、例えばジープの平均販売価格は5年間に61%も上昇して5万4700ドルになり、販売台数は34%も減少して64万台(2023年)となっていたのです。消費者の足が遠のいて在庫が積み上がっているのに、販売奨励金を渋り対応を怠っていると販売店からの悲鳴と抗議の声が本社に対し上がりました。各ブランドの米国販売責任者の離職やすげ変えが相次ぎ、本社の舵取りが問題視されたのです。
ようやく重い腰を上げ、事態の改善に動いたタバレス氏は、販売奨励金の積み増しと生産調整で43万台に積み上がった在庫の適正化を年内に完了すると決め、同氏と取締役会の間では2026年初めの任期満了で円満退社が決まったはずでした。