先週末、メルセデス・ベンツが発表した今年第3四半期の決算では、純利益が前年同期比で54%減少し、2024年通年の営業利益率予想も8.5%(昨年は12.6%)へ下方修正しました。また、ポルシェも1〜9月の売上高が−7%、営業利益率は17%→14%に減少しています。背景には、中国市場での高級モデルの販売不振と、世界的なEV販売の低迷があります。またフォルクスワーゲンは、ドイツ工場3カ所を閉鎖し、従業員の賃金を一律10%カットして2年間凍結する方針であることが明らかになりました。欧州ではコロナ前から需要が200万台減少しており、VWブランドは50万台の過剰生産能力を抱え、労務費やエネルギーコストの高いドイツ工場を縮小せざるを得ないという理由です。ドイツ自動車メーカーは、近年遭遇したことのない困難の中にあります。(タイトル写真は北京モーターショーで発表された新型メルセデス・ベンツGクラスEV)

VWはドイツ3工場の閉鎖と賃金10%カット待ったなし!?

9月初めに、87年の歴史において初めてドイツ国内工場の閉鎖を検討すると発表したフォルクスワーゲンは、9月末には今年通期の売上高や営業利益率の見通しを、前年比微減の900万台と5.6%(従来は6.5〜7%)へと引き下げました。今週月曜日(28日)には、3カ所のドイツ国内工場の閉鎖と数万人の解雇、従業員賃金の一律10%カットなどが計画されていると、労使協議会の代表ダニエラ・カヴァロ氏がドイツ本社工場での集会で明らかにしました。

VW労使協議会/IGメタルとの2回目の賃金交渉が行われた10月30日には、同社(VWグループ)の第3四半期の決算も発表されました。それによれば、Q3の販売台数は212万台(前年同期比−8.3%)、売上高784億ユーロ(同−0.5%)で営業利益率は6.2%から3.6%に大きく低下しており、これはVWのリストラクチャリングコストやアウディのブリュッセル工場の閉鎖に関する費用が22億ユーロ計上されているのも一因です。また、中国市場の1〜9月の販売は205万台(前年同期比−10%)で、現在の受注残は昨年の同時期を上回っているというEVの世界販売台数は507,000台(同−5%)となっています。

労組は12月からストライキに入ることも辞さない構えですが、経営側もこれに怯む気配はなく、社内で「毒物リスト(Giftliste)」と呼ばれているというリストラ計画では、3カ所の工場の閉鎖、従業員の給与を一律10%カットし(組合は7%の賃上げを要求)、「タリフプラス(tarif plus)と呼ばれる各種の特別手当の廃止などが含まれており、VWは30日のプレスリリースで団体交渉での労務費削減案のポイントを詳しく説明しています。

経営側は、高い労務費やエネルギーコストなどでドイツ工場のコストは、競合他社に比べて25〜50%も高く、欧州市場はコロナ前に比べて200万台も減少したままで、VWブランドには50万台の余剰生産能力があると主張しています。組合側は、1990年代の不況時に実施した週4日勤務のワークシェアリングなどで乗り切り、工場閉鎖は回避する案を提示していましたが、これでは根本的な解決にならないと経営側は譲らない姿勢です。ドイツの新聞によれば、「タリフプラス」クラスの労働者の月収は9,000ユーロ(約150万円)にも達するそうなので、労務費が他国に比べて相当高いのは確かでしょう。

画像: 会社側との2度目の交渉に先立ってヴォルフスブルグ工場で従業員集会を開き、ドイツ国内3カ所の工場が閉鎖対象に上がっていると公表したダニエラ・カヴァロVW労使協議会会長(同氏のインスタグラムより)。

会社側との2度目の交渉に先立ってヴォルフスブルグ工場で従業員集会を開き、ドイツ国内3カ所の工場が閉鎖対象に上がっていると公表したダニエラ・カヴァロVW労使協議会会長(同氏のインスタグラムより)。

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