2024年9月6日、トヨタ自動車は「蓄電池に係る供給確保計画」が経済産業省により認定されたことを発表した。政府からの支援を得て、EVや次世代電池(パフォーマンス版)、全固体電池の開発・生産の基盤を強化する計画だ。

再生可能エネルギーを無駄なく活用できるかがカギ

日本における発電電力の大半は火力発電で賄われているが、その割合は年々小さくなり2023年は約67%(2018年は約77%)。その反面、太陽光パネルや風力、水力など再生可能エネルギーによる発電は少しずつ増えて約26%(同、約17%)に、今後さらに増加していくことが見込まれる。ただ出力調整が難しい自然エネルギーゆえ、せっかくCO2排出量ゼロで発電しても、その量が需要に見合わず捨てられてしまうことも多い。

政府はこうした再生可能エネルギーによる電力を貯める「蓄電池」が、2050年までにカーボンニュートラルを実現するためのカギを握っているとして、これに関わる産業を支援していく「蓄電池に係る安定供給確保を図るための取組方針」を発表した。これに基づいて「蓄電池の安定供給の確保」を図る企業から提出された計画を経済産業省(所管のNEDO)が審査、経済産業大臣が認定し、開発や生産など設備投資に助成金を交付する。

画像: 再生可能エネルギーに由来する電力の有効活用が課題となっている。

再生可能エネルギーに由来する電力の有効活用が課題となっている。

再生可能エネルギー由来の電力は電力系統を伝って系統用蓄電池や産業用蓄電池、家庭やEVに備え付けられた蓄電池に充電して消費、または電力系統に戻されて需要のあるところで使用されるなど、用途や設置場所はさまざま検討されている。

こうした蓄電池市場は拡大傾向。現在10兆円ほどと言われている世界蓄電池市場は2030年に40兆円、2050年には100兆円の規模に推移していくことが予測されている。しかし、世界市場の中で日本メーカーによるシェアはCATL(中国)やLGエナジーソリューション(韓国)など海外メーカーに押されて減少傾向にあり、このままでは日本の製造基盤が失われるおそれが大きいとして、日本政府による蓄電池サプライチェーンに対する支援策が導入されたわけだ。

その分野は開発、生産、リユース、リサイクルなどさまざまあるが、今回トヨタ自動車が発表したのは「開発・生産」の分野だ。

他にも多額の助成金が自動車産業に投入される可能性大

トヨタはカーボンニュートラルに向けた手段をひとつに絞るのではなく、ストロングハイブリッド車からプラグインハイブリッド車、燃料電池車、水素エンジン車、EVなどさまざまな方面からアプローチする「マルチパスウェイ」の戦略をとっている。こうした電動車・次世代エネルギー車の多くには大容量バッテリーが搭載されるが今回の焦点はEVだ。

走行可能距離を伸ばすために大容量のバッテリーを搭載するEVは、蓄電池としても使える。また近年ではEVに充電した電力を電力系統に戻すV2G(Vehicle to Grid)の研究も進んでいる。すでに実証実験も行われて、再生可能エネルギー由来の電力安定供給に向けた下地づくりが行われている段階だ。

一方トヨタ自動車のEVといえば、レクサスブランドが2035年までにEVブランドに移行する方針だ。現在RZ450eやRZ300e、UX300eといったモデルのラインナップに限られているが、2026年には4ドアセダンLF-ZCの市販車が登場、その後も次世代スポーツカー「エレクトリファイド・スポーツ」やフラッグシップモデル「LF-ZL」など、コンセプトカーの市販バージョンの登場も期待されている。

画像: ジャパンモビリティショー2023で公開されたEVの4ドアスポーツのコンセプトカーLF-ZCには、「次世代電池(パフォーマンス版)が搭載されている。

ジャパンモビリティショー2023で公開されたEVの4ドアスポーツのコンセプトカーLF-ZCには、「次世代電池(パフォーマンス版)が搭載されている。

なかでも、2026年に導入されるであろうEV「LF-ZCの市販モデル」では、エネルギー密度を高められた角形電池「次世代電池(パフォーマンス版)」の性能向上や軽量化、空力性能の向上により航続距離1000kmの実現を目指している。

この「次世代電池(パフォーマンス版)の生産」に加えて「全固体電池の開発・生産」の計画も盛り込まれた「蓄電池に係る供給確保計画」が、経済産業省に提出されて認定を受けた。

計画の概要によると、生産基盤の整備、生産技術の導入・開発・改良を行うもので、約3300億円の必要資金のうち最大約1178億円が助成されるという。2026年10月以降に供給を開始して年間25GWhの生産が予定されている。

画像: トヨタが開発を進めている全固体電池。

トヨタが開発を進めている全固体電池。

2024年9月9日現在、経済産業大臣の認定を受けた計画は27件あるが、その中でも最大助成額1000億円を超える事業は3件で、ホンダやスバル、GSユアサやパナソニックなどが関連したいずれも自動車産業だ。経済産業省による「蓄電池産業戦略」でもモビリティ向けバッテリーの重要性を解く文言が並んでおり、政府からの期待も大きいことが見て取れる。

倍々ゲームのように拡大していく蓄電池市場の中で、政府からの支援を得て日本の蓄電池産業が世界に存在感を示すことができるのだろうか。

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