前回はアメリカのGMとフォードの2024年上半期決算発表の内容を見ましたが、今回はドイツのプレミアムカーの両雄メルセデス・ベンツとBMWの上半期決算発表からわかることを紹介します。コロナ禍や半導体不足から回復して好調だった前年と比べると市場競争は激化し、電動化やデジタル化への投資が嵩む厳しい経営環境下で、ドイツ高級車のライバルの明暗は分かれているようです。(写真は、今年4月に部分改良されたメルセデス・ベンツEQS。バッテリーを118kWhに増強して航続距離を799kmに伸ばし、評判の芳しくなかった卵形のデザインを修正すべくフロントグリルを一新しエンブレムをボンネット上に据えた)

BMWの業績は好調な上級モデルとEVが牽引

一方のBMWは、同様に厳しい市場環境と変革への投資の渦中にありながらも、高く評価できる決算を示しています。販売台数はモデル切り替えの狭間で−18%となったMINIをBMWブランドがカバーして前年と遜色なく、売上高は微増しており、どちらもメルセデス・ベンツ(乗用車)を上回りました。本国ドイツの販売は横ばい、中国も−4%に減少をとどめており、米国販売は+1.4%でメルセデスとの差を広げています。

画像: メルセデス・ベンツは商用車と金融・モビリティ部門を合わせたグループ全体では726億ユーロの売上高となりBMWグループ(含2輪車)に並ぶ。2018年はメルセデスGr.の売上の6割程度だったBMW Gr.の近年の躍進が著しい。

メルセデス・ベンツは商用車と金融・モビリティ部門を合わせたグループ全体では726億ユーロの売上高となりBMWグループ(含2輪車)に並ぶ。2018年はメルセデスGr.の売上の6割程度だったBMW Gr.の近年の躍進が著しい。

EVは、BMW(含MINI)が19万台(+24%)と9万3000台(−17%)のメルセデスの倍以上を販売しており、この点はEV専用のEQシリーズに舵を切ったメルセデスと、同一プラットフォームとボディスタイルでICEもPHEVもBEVも展開する「フレキシブル・パワートレイン戦略」をとったBMWとの間で明暗が分かれた形です。両社ともに、MMAとノイエ・クラッセという新世代のEVプラットフォームを来年以降導入するので、この勝負がどうなるかも注目されます。ちなみにBMWは、7月の欧州市場でのEV販売台数(14,869台)で王者テスラをわずかに上回りトップに立ちました。

BMWは2025年のCO2規制を余裕でクリア

BMWは、第2四半期ではEVで17.4%、PHEVを含む「x EV」で24%のEV化率を達成しており、2025年から1キロメートル走行あたり93.6g(WLTPモード)と15%以上厳しくなるEUのCO2排出量規制も十分クリアできる見込みです。来年末から登場するノイエ・クラッセは同社の金看板である3シリーズやX3のセグメントの車種になります。これが成功するかどうかは、正に同社の将来を決すると言えますが、今のところ、BMWの顧客は選択肢を備えた同社の電動化戦略に安心感を持っているといえそうです。(メルセデスのケレニウスCEOは、2025年のCO2規制について、場合によっては他社とタッグを組むプーリングが必要になるかもしれないと示唆しました。同社のx EV比率は18%にとどまっておりEVとPHEVの台数はほぼ半々なので、達成はそう容易ではないかもしれません)

画像: BMWで一番人気のEVであるi4は、発売から2年を経ても依然2桁の成長を続けている。

BMWで一番人気のEVであるi4は、発売から2年を経ても依然2桁の成長を続けている。

BMWは、価格維持に関しても自信を持っており、平均販売価格が約51,000ユーロ(約816万円)と昨年から安定している模様です。中国については、セグメントシェア5%の50万元(1000万円)以上の市場が今年−5%と減少している中で、BMWは逆に+3%と販売を伸ばしており、好調なX5や7シリーズに加え今年後半から現地生産の新型5シリーズがフルに寄与することにより増販を見込んでいます。また、米国の在庫は31日分で業界平均(55日)より大幅に少なく、インセンティブを多く費やす必要はないようです。

オリバー・ツィプセCEOの口調からは、BMWは独自の判断とリスク管理によって、(名指しはしませんが)ライバルのように性急なEVシフトで翻弄されることなく、またサプライチェーンのボトルネックの影響も受けずに順調に変革の流れに乗っているという自負が感じられました。

This article is a sponsored article by
''.