商用運行するためのシステムとは違う個人向け車両
運転手を必要としない自動運転レベル4以上の技術にまつわる情報は、技術開発した企業やサプライヤー、地方自治体やバス運行事業者などによって多くが公開されてはじめている。最近だと「日産がセレナベースの車両で実証実験」や、「川崎市が自動運転路線バスを2027年度に実装予定」など近い将来の公共交通のあり方を予感させるニュースは多い。
ただ、こうした情報のほとんどは、自動運転による運行エリアやルートなどをある程度限定した商用利用だ。運転手不足や利用者減少などを要因とした、移動の自由を確保できない状況を打破するという意味において有効な手段であると期待されている。
一方で、個人で所有する自動運転車の情報はあまり多くはない。走行範囲を限定しない個人向け販売車両の技術開発はさらに高度になること、また道路環境の整備など課題解決が必要となり、商用利用よりも実装までに時間がかかることが予測される。
そうした中、北京と上海に研究開発センターを持つメルセデス・ベンツは、自動運転タクシーを中心に展開するWeRide(ウィーライド/中国)と共同で、北京の市街地と高速道路で自動運転レベル4の試験を行う許可を取得したと発表。これはメルセデス・ベンツ中国による技術研究プロジェクトの一環で、個人所有する車両に自動運転レベル4のハードウェアとソフトウェアを搭載するためのテストを行うという。
LiDAR(ライダー)やレーダー、カメラなどのマルチセンサーによって専用に設計・構成された自動運転レベル4システムは2台のメルセデス・ベンツ Sクラスに搭載される。センサー認識の研究と、気象や交通などさまざまな条件下での性能のチェック、認識したデータの統合などに重点を置いた検証を行うという。
テストは安全に配慮しつつさまざまな状況下で行わる。混雑した市街地、対向車がいる交差点での左折(日本における右折)、ラウンドアバウトの通過、Uターン、そして駐車。また高速道路では、前走車の状況を勘案して自動的に車線変更したり、料金所の通過も行うとしている。もし走行中にアクシデントが発生しても、リスクを最小限におさえる判断と操作をし、車両を安全に停止するところまで行う。
メルセデス・ベンツAGのマーカス・シェーファー最高技術責任者(CTO)は今回の発表について、「北京での自動運転レベル4試験が承認され、その後、世界中の個人所有車両で使用されることで、メルセデス・ベンツは自動運転への道を飛躍的に前進します。私たちは再び、(意思決定から実行までの期間が短い)チャイナスピードで新しい業界ベンチマークを設定します」と語っている。