2024年6月25日、フォルクスワーゲンはアメリカの新興EVメーカーであるリヴィアン(Rivian)に2026年までに総額50億ドル(8,000億円)を投資し、将来のSDV(ソフトウェア・ディファインド・ビークル)のE/Eアーキテクチャやソフトウェアを開発するJ/V(ジョイントベンチャー)を設立すると発表しました。昨年7月に、中国新興EV御三家の一つであるシャオペン(Xpeng=小鵬汽車)に7億ドルを出資をして4.99%の株式を取得するとともに、同社のプラットフォームを使用して2026年に2車種の中型車を発売すると決めたVWですが、今回のリヴィアンへの投資はその7倍以上の規模になります。自身のソフトウェア開発会社カリアッド(CARIAD)の迷走が足を引っ張ってきたVWですが、今回の巨大投資の背景を探ってみます。(タイトル写真はリヴィアンR1TとR1S)

総投資額50億ドルはリヴィアンの時価総額の3割超

VWはまずリヴィアンの発行する転換社債に今年中に10億ドル投資し、さらに2025年と2026年に10億ドルずつ投資する計画です。同時に、同社と50:50で設立するJ/Vにも10億ドルを投資し、さらに2026年に融資の形で10億ドルを投入して、それらの合計は50億ドルに上ります。この額は、現在のリヴィアンの時価総額(一株15.5 ドル、時価総額154億ドル)の30%超に当たります。

J/Vには2人のCEOが任命され、リヴィアンからはCTO(チーフテクノロジーオフィサー)に当たる人物が、VWからはCOO(チーフオペレーティングオフィサー)に相当する人が任命されます。

2023年は54億ドル(8600億円)の赤字

フロリダ生まれのエンジニアのR.J.スカリンジ(Scaringe)氏によって2009年に設立されたリヴィアンは、2021年11月にナスダックに上場しており、折からの新興EVブームで106ドルの初値をつけて119億ドル(当時の為替レートで1兆3400億円)を調達し、時価総額は9兆円を超えてGMに並びました。その後、EVへの熱狂が去り、VWが出資を発表する直前の株価は11ドル前後で低迷していました。同社は、2021年秋に発売したフルサイズのR1Tピックアップトラックと2022年に発売したR1S(SUV)の2車種を販売しており、昨年の合計販売台数は5万122台でした。

今年3月に中型SUVの「R2」とよりコンパクトな「R3/R3X」を発表しましたが、R2の発売は2026年前半とまだ2年先になります。イリノイ州ノーマルの工場(旧三菱自動車の北米工場)で生産を行なっており、ジョージア州に第2工場を建設する計画がありますが、昨年も54億ドルという巨額の赤字を計上しており、テスラのように量産に成功して米国で2つ目のEV専業メーカーとして躍進する期待があると同時に、今年5月に破産申請したフィスカーのような顛末に至る可能性もゼロではありません。リヴィアンと同じように期待とリスクが混交したEVスタートアップには、例えば中国のNIOがあります。同社も昨年の生産台数は16万台で29億ドルの赤字を計上しています。

画像: リヴィアンが3月に予約を開始したミッドサイズSUVの「R2」の価格は4万5000ドルからとなる。(写真:リヴィアン)

リヴィアンが3月に予約を開始したミッドサイズSUVの「R2」の価格は4万5000ドルからとなる。(写真:リヴィアン)

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