E/Eアーキテクチャの共通化によるコストダウン
ではそのようなリスクを顧みずVWが投資に踏み切り、SDV向けE/Eアーキテクチャとソフトウェアの取得に乗り出したその内容を見てみましょう。詳細は、リヴィアンがアナリスト向けに行なった電話会見でスカリンジCEOが語っていますが、J/VではSDVには必須とされるゾーン(Zonal)アーキテクチャが、リヴィアンのR2向けのE/Eアーキテクチャとソフトウェアをベースに開発されます。ゾーンアーキテクチャでは、従来の車両ではボディ、シャシー、駆動システム、熱管理システム、ドア、シートなど機能によって各所にバラバラに配置されていたECUやコントローラが、「リヴィアン式では、イースト、ウエスト、サウスといった数カ所のゾーンに集約される。これによってECUドメインの個数と複雑さが簡略化され、ハーネスの長さや量も削減される(スカリンジCEO)」ことになります。
E/Eアーキテクチャは、半導体やPCBA(プリント基板アセンブリ)などのハードウェアとOSなどのソフトウェア群で構成されますが、フォルクスワーゲンが入門ブランドからアウディやポルシェなどのプレミアム&高級スポーツカーブランドまで幅広い車種で採用することで、これらハードウェアの調達コストも大幅な削減が見込まれ、同時の開発コストも削減できます。リヴィアンは、R1シリーズの今年の改良で、17あったECUモジュールを7つに削減するなどE/Eアーキテクチャを一新しており、性能や価格帯の違いに対応できるそのシステムの拡張性と柔軟性は業界をリードするものだと自信を持っています。
VWのカリアッドの役割はどうなる?
このように、クルマの脳と神経系に当たるE/Eアーキテクチャとソフトウェアをリヴィアン開発ベースに依存するとなると、VWのカリアッドはどうなるのか、またシャオペンとの関係が気になります。これについては両社によれば、バッテリーマネジメントや駆動システム、自動運転、コネクティビティなどのソフトウェアはJ/Vの開発には含まれず、両社が独自に開発すると明確にされているそうです。また、シャオペンについては、東(イースト)はシャオペンとVWチャイナテクニカルセンターが担当し、西(ウエスト)はリヴィアンとのJ/Vで開発していく地域別アプローチをとるとアナリストとの電話会見でVWは説明しました。
VWの説明資料(下図参照)によれば、J/Vのソフトウェアは、アウディとポルシェの共同開発したPPEプラットフォームと2027〜2028年頃登場予定のグループ統一EVプラットフォームSSP(Scalable System Platform)にも採用されます。一方、VW ID.シリーズやアウディQ4 e-tronのベースであるMEBプラットフォームやPPEの一部には、カリアッドのE3 1.1や1.2などのソフトウェアが継続使用されます。「CARIADは縮小するのか」というアナリストからの質問に対しては、自動運転やコネクティビティの開発とメンテナンスはCARIADが引き続き担当し縮小ではないとしましたが、車両全般のE/Eアーキテクチャと各ゾーンやデバイス間の関係性や通信のネットワークトポロジー(topology)はJ/Vが担うことになり、CARIADの責任範囲はかなり絞り込まれそうです。