自動運転という言葉は知っているけれど、いまひとつ実感がわかないという声をよく聞く。各地で自動運転バスの実証実験が行われているが、それに乗ったことがある人はまだ限定的だ。とはいえ、自動運転がもたらす新しい社会の到来は予想以上に早まりそうだ。海外の情報も交えながら、これから日本で何が起こるのかを俯瞰してみた。(タイトル写真は横浜みなとみらい地区で実証実験を開始する日産の自動運転実験車両)

新東名高速で大型トラックによる連続自動走行を達成

去る2024年6月24日、自動運転トラック幹線輸送サービスの社会実装を目指す株式会社「T2」は、新東名高速道路の駿河湾沼津SA〜浜松SA間116kmをおよそ90分間にわたりドライバーが一切関与せずに連続運転する実証実験に成功したと発表した。実験に使用した区間は、政府のデジタルライフライン全国総合整備計画において「自動運転サービス支援道(自動運転車優先レーン)」として2024年度内の指定が予定されている。

画像: 実験中の大型トラック。実験は“レベル2”で行われたが中身は“レベル4”による遠隔監視・運行に対応している。

実験中の大型トラック。実験は“レベル2”で行われたが中身は“レベル4”による遠隔監視・運行に対応している。

今回の実験は自動運転バスの実証実験と同じくドライバーが同乗した“レベル2”だが、116kmにわたりドライバーの運転操作を必要とせず、トンネルや合流部でも安定した走行が可能なことを実証したという。“レベル4”による幹線輸送サービスの実現にまた一歩近づいたと言えそうだ。なおT2では、2025年3月には実験区間をさらに延長して、神奈川県・綾瀬〜兵庫県・西宮(およそ500km)での検証を計画している。

画像: 116kmに及ぶ走行はすべてシステムが実行した。ドライバーが操作に介入することはなかったという。

116kmに及ぶ走行はすべてシステムが実行した。ドライバーが操作に介入することはなかったという。

当面の目標はレベル4の無人自動運転の実現

すでにご存じの方も多いが、レベル2やレベル4というのは、ドライバーがどこまで運転に関与するかを表すものだ。レベル1〜レベル2は運転の主体がドライバーであり、レベル4〜5は車両のシステムが主体でドライバーの介入は必要としない。その中間となるレベル3は特定の条件下(速度、走行エリア、天候ほか)ではシステムが主体で走行するが、状況に応じてドライバーが介入しなければならない。レベル4では、特定の条件下においてシステムがすべての運転操作を行う。レベル5は条件をつけずにすべての運転操作をシステムが担う。つまり、レベル4とレベル5ではドライバーが不要な無人運転が可能だ。

ちなみに「ADAS(先進安全運転支援システム)」はレベル1〜レベル2に相当し、「AD(自動運転システム)」と呼べるのは厳密にはレベル3以上となる。もっとも、ADASは広義のADに含まれる概念と言ってもいいだろう。

現在、日本では公道上において走行エリア限定の遠隔監視によるレベル4相当(特定自動運行と呼ばれる)まで可能だが、各自治体の公安委員会に申請して許可を得たうえで、遠隔監視も行わなければならない。ドライバーが同乗せずにシステムと遠隔監視だけで運転タスクを担うには、まだ超えなければならないハードルはあるようだ。このあたりの事情は、とりあえず発進してみて、トラブルが発生する都度に改善していく米中とのお国柄の違いと言えるかもしれない。

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