自動運転という言葉は知っているけれど、いまひとつ実感がわかないという声をよく聞く。各地で自動運転バスの実証実験が行われているが、それに乗ったことがある人はまだ限定的だ。とはいえ、自動運転がもたらす新しい社会の到来は予想以上に早まりそうだ。海外の情報も交えながら、これから日本で何が起こるのかを俯瞰してみた。(タイトル写真は横浜みなとみらい地区で実証実験を開始する日産の自動運転実験車両)

フランスの小型自動運転バスはすでに日本でもお馴染み

欧州ではシャトルと呼ばれる乗り合いの小型自動運転EVバスの開発が盛んだ。日本でも各地で実証実験に用いられている自動運転シャトルは、ほとんどがフランスのNavya(ナヴィア:日本のマクニカが事業継承)製だ。一方、各国は米中に比べ遅れていたロボタクシーの実現に向け法規制の改定・緩和を急いでいる。

画像: ヴェルヌ/リマックが発表したロボタクシー専用車。2026年にクロアチアを皮切りに、ドイツや英国、中東などでも事業を展開。

ヴェルヌ/リマックが発表したロボタクシー専用車。2026年にクロアチアを皮切りに、ドイツや英国、中東などでも事業を展開。

そうした動向を背景にして、先日、クロアチアのリマックが欧州初のロボタクシー事業会社「Verne(ヴェルヌ)」の設立を発表、併せてハンドルもペダルもないロボタクシー専用車両を公開した。事業スタートは2026年を予定しており、本国だけでなくイギリスやドイツほか、中東など11都市で導入契約が結ばれている。ほかにも、仏大手サプライヤーのヴァレオや独コンチネンタルなど世界的なサプライヤーも新規事業への参入チャンスをうかがっているようだ。

ホンダと日産がロボタクシー参入へ着々と準備を進める

翻って我が日本はどうなっているのだろう。冒頭に紹介したように、2025年度中には自動運転による物流が開始されるだろう。当初はドライバーが同乗したレベル2での運行になると思われるが、よほど大きなトラブルが発生しない限り早期にレベル4へ移行していくと予想する。

また身近なところでは、2026年初頭にホンダがCruize、GMと3社で共同開発した対面6人乗りのロボタクシー「クルーズ・オリジン(Cruise Origin)」を使ったタクシーサービス事業を立ち上げる。すでに実車も公開されているのでご存じの方も多いが、ハンドルもペダルもないロボタクシー専用車両だ。実証実験ではないので、だれでも乗車することが可能。当初は、東京都心部が中心で数十台規模でスタート、順次台数を増やすとともにサービス提供エリアも拡大して500台規模での運用を見込んでいる。

画像: 2026年に事業を開始するホンダの「クルーズ・オリジン」は対面6人乗り。完全なロボタクシーであり、ハンドルやペダルはない。

2026年に事業を開始するホンダの「クルーズ・オリジン」は対面6人乗り。完全なロボタクシーであり、ハンドルやペダルはない。

日産も2027年度の本格的なロボタクシー事業の開始を目標にしている。2024年第4四半期からリーフをベースに自社開発した車両による実証実験を横浜みなとみらい地区で開始、25年度以降はエリアや規模を拡大していく。当初はドライバーが同乗するが、サービスの正式な開始時点にはドライバーレスの専用車両(ハンドルやペダル類がないロボタクシー専用車両か?)によるサービスの実現を目指している。

画像: 日産が実証実験で使用するリーフベースのロボタクシー。2027年の事業開始時には専用車両で運行するという。

日産が実証実験で使用するリーフベースのロボタクシー。2027年の事業開始時には専用車両で運行するという。

日本でもレベル4のバスやロボタクシーが数年以内に走り出す

さて、今後日本の自動運転はどうなるのか。見えてきたのは、(日本に限らず)レベル4の自動運転は、まず物流、バスやタクシーなど公益性の高い事業サービスが先行するということだ。自家用車ではNoAのような究極のレベル2への進化も期待されるものの、狭い道路に歩行者や多種多様なモビリティがひしめく日本では、中国とは異なるアプローチが必要になりそうだ。ちなみにトヨタは中国のMomenta(モメンタ)と共同開発した市街地NoA技術を、年内に中国で発売するbZ3Xに搭載するようだが、日本への導入の可能性は低い。

いずれにせよ、レベル4のトラックやバス、ロボタクシーがあと数年以内に日本の道を走り始めることは間違いない。予想していたよりも早い。同時にドライバーがいない未知の乗り物に対する「社会的なコンセンサス」が求められることになる。そのあたりの成り行きにも留意しておいたほうが良さそうだ。

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