自動運転の社会実装で先行するのはアメリカと中国
自動運転の先進国と言われる米国および中国では、すでにドライバーが同乗しないレベル4の商業タクシー事業が解禁されている。いわゆる「ロボタクシー」だ。
まず米国だが、Google/Alphabet系のWaymo(ウェイモ)、GM系のCruize(クルーズ)、Amazon系のZOOX(ズークス)などが主なところだ。ほかにも大小さまざまなスタートアップや、ヒョンデなどの外資系も参入しており、来る8月8日には大本命のテスラがロボタクシー事業参入の狼煙をあげるという。
ただし、数が多いだけにトラブルも少なくはない。またレベル4ゆえに運行エリアが限定されるので、目的地によっては隣接エリアであってもいったん降車して新たなタクシーに乗り換えなければならないなど、利便性での課題も残る。
物流事業に関しても、Aurora Innovations、Kodiak Robotics、Gatik AIほか、大小さまざまなテック企業やスタートアップが実現に向けて動き始めている。主に高速道路などの固定ルートをレベル4で走行するのは日本と同じで、現状、日米はまだ同じスタートラインに立っていると言えるだろう。
中国は究極のレベル2、「市街地NoA」搭載EVが急増
中国でもロボタクシー事業は急速に拡大している。スマートシティ構想の一環として国を挙げて自動運転技術の普及を進めており、すでに33都市以上で2800台以上の無人のロボタクシーが運行している。Poni.ai(ポニー・エイアイ)、Baidou(百度:バイドゥ)などがその代表的な存在だ。
それにも増して注目すべきは、「市街地NoA(Navigation on Autopilot)」と呼ばれる“究極のレベル2”テクノロジーが、富裕層向けの市販車に続々と搭載されるようになってきたことだ。
NoAは簡単に言えば高速道路だけでなく、市街地でもハンドル、アクセル、ブレーキ、さらに車線変更や車庫入れまで自律的に行うシステムである(テスラの「FSD」もこれに近い)。もちろんレベル2である以上、ドライバーは即座に運転に介入できるように備えていることが求められる。狭い裏道をドライバーが操作せずに器用に走りまわる様子が動画サイトに多数アップされているが、大方のユーザーが「自動」運転といわれてイメージするのは、おそらくこんな光景なのだろうと思わせる。
使用できるエリアは大都市部に限られているようだが、サブスクリプションのOTAによって、走行エリアの拡大や変更も可能としているようだ。そしてこれが富裕層向けの新たなビジネスとなりそうだ。
背景にあるのは、中国IT産業の目覚ましい発展と、それが自動車産業と密接に関わりを持ち始めているところである。そしてユーザーも愛車のハイテク化を望んでおり、クルマのスマホ化が加速しているのだ。とかくEVの性能にばかりスポットが当たりがちだが、中国のADASは西側のそれとは一線を画して独自の自動運転技術として進化を始めたようだ。