2024年6月13日、テスラは米テキサス州オースティンの工場で株主総会を開催しました。開催前から話題をさらったのが、560億ドル(8兆7000億円)に上るイーロン・マスク氏への業績報酬です。「マスク氏のお友達で構成される報酬委員会が決めた理不尽な額であり無効」と一部株主が提訴した裁判では、今年1月にデラウエア州の判事が無効と判断した空前の額のパッケージですが、株主投票では72%の賛成で再度支持されました。投票結果の発表に小躍りしながらステージに登場したマスク氏は、自動運転や人型ヒューマノイドロボットのオプティマスの話に多くの時間を割き、EVビジネスに関するプレゼンテーションは駆け足という形でした。マスク氏は「テスラは車会社以上にソフトウェア会社だ」と語り、2029年までの5年間に時価総額は10倍になるとの投資ファンドの予測を受け合って、EV販売の減速下でイーロン信者の抱いた一抹の不安も吹き飛ばしたようです。(タイトル写真は株主総会で登壇したイーロン・マスクCEO。テスラ配信動画より)

560億ドルの報酬は企業価値の上昇に見合った額?

560億ドルといえば、ホンダやGMを丸ごと買収できる額であり、欧米の大手自動車メーカーCEOの報酬が年2000万ドル(30億円)前後ということを考えるといかにも法外という印象ですが、これに関してテスラの価値は5年後に10倍に上がるというレポートを発表した米アーク(Ark)インベストメントのケイティ・ウッズ代表は、2018年からの企業価値の上昇に見合った額だと擁護しています。同氏によれば、マスク氏は2008年にCEO就任以来10年間、給与やボーナスは1セントも受け取っておらず、モデル3の量産に向けた試練の渦中にあった2018年当時、誰も時価総額を毎年500億ドル、売上高を100億ドルずつ増やすといった目標を達成できるとは考えていなかったというのです。

2018年のテスラの株価は20ドル前後。これが2021年には400ドル越えまで上昇し、高金利やインフレの調整が入った今でも180ドルを維持し、この間に時価総額は600億ドルから6000億ドル(2023年末)と10倍になったことを思えば決して法外な報酬ではなく、恩恵を受けた株主や従業員と同様に対価をもらって然るべきというのがこのファンドの説明です。

今回の株主投票で複数の機関投資家の反対があったにも関わらず再承認された背景には、マスク氏がこのストックオプションを行使して換金できるのは5年後なので、それまで同氏がテスラの経営を離れることがないだろうという見通しがあります。マスク氏は、デラウエア州の判決の後、テスラの経営を続けるには25%の株式の保有(現在は13%を所有)を望むとツイートしており、テスラにはマスク氏が必要と大半の株主が考えているという点で信任投票となったといえます。ただし、今回の株主投票は報酬を執行する効力はなく、マスク氏はデラウエアの判決を控訴するだろうということです。

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