フォルクスワーゲンはEVの新ブランド「ID.UX」を立ち上げ
昨年約3000万台の車が生産された中国ですが、そのうち1/3の1000万台を記録したNEV市場で、ID.シリーズの販売が低迷し苦戦が報じられるフォルクスワーゲン(VW)は、昨年新興EV御三家の一つのシャオペン(小鵬)へ約700億円を出資し、同社のEVの車台を使って新製品を開発するなど立て直しを急いでいます。今回はこれまでのVWブランドのデザインの伝統から大胆にテイストを変えたSUVの「ID. Code」を発表しました。低いボンネットと絞り込んだグリルレスのフロントエンドの薄いヘッドライト形状や、直線的なキャラクターラインを廃し、高い位置に大きく膨らんだ前後のフェンダーなどは、中国の新興ブランドのデザインに似た印象です。
従来のVWのデザインは、「安定感(stability)」や「好ましさ(Likability)」といった要素が必須でしたが、「安定感が強すぎるとスタティック(静的)な印象になる。今回のID.Codeはスポーティさを重視した」と、VWやアウディでエクステリアデザインの責任者を務め、直近はベントレーのデザインのトップを務めたのち昨年VWブランドのデザイン責任者に就任したアンドレアス・ミント氏は筆者に語りました。「横から見てガラスエリアとボディの部分の比率が従来は1:2だったのが1:3になった」という指摘も肯定して、「土台部分は強いボディ、長いホイールベースと大きな電池でSUV風だが、上屋はスリムで流れるようなルーフを持つクーペのようであり、SUVとCUVを融合したようなデザイン」という説明です。
中国人のデザイナーやマーケティング部門の声を反映して国際的なデザインチームで本社のヴォルフスブルグのスタジオで開発したそうで、このコンセプトカーは中国向けですが、そのデザイン要素は今後の各市場向けのモデルのデザインに取り入れられるとのことです。大胆なデザイン言語の飛躍をおこなったことを認めた上で、「スリムなボディ、広いトレッド、前後ホイールの上のアーチはVWのデザインの伝統を継承している」とも説明してくれました。
ID. Codeのデザインは、確かにこれまでのVW車の伝統から大きく踏み出したと感じますが、今風のフロントエンドやダイナミックなショルダーのボリュームなどは中国の新興ブランドのSUVのようで、「バッチを外すと区別がつかないのでは」といった声も聞かれました。今回北京の路上やショッピングモールで最新の中国車を見ていると、VWやビュイック、ヒョンデといったかつて中国市場を覆っていたブランドのロゴやボディスタイルが古めかしく見えてくるのも事実です。NEVの時代に相応しい新しさを演出することが、これら伝統的なブランドでも必須になっていると感じます。
25日の9時から行われたプレス会見では、VWコアブランドグループのトーマス・シェーファーCEOが、「『ID. Code』は、デザインにおいてもレベル4の自動運転を搭載する点でもフォルクスワーゲンの未来を解読(decode)するモデルだ。VWは過去の成功に安住することなく、チャイナスピードで変革していく」と気炎を吐きました。