グローバルで期待が高まりつつある燃料電池車
電気、水素、合成燃料、バイオ燃料などカーボンニュートラルなクルマ社会実現に向けた次世代のエネルギー・パワートレーン開発は多岐に渡り、自動車メーカー各社はそれぞれ独自の方針を示して開発を進めている。
EVに的を絞ってプレミアム化を推進するブランドもある一方で、BMWは多角的にパワートレーン開発を行ってきたメーカーだ。従来からのガソリン・ディーゼルエンジンを効率化することはもちろんのこと、外部充電できるPHEVや48V MHEV、そしてEVも販売している。
こうしたBMWの電動車ラインナップに燃料電池車(FCEV)が近い将来加わるかもしれない。BMWによるFCEV開発はいまに始まったことではなく、市販車両こそ登場していないものの2011年からトヨタ自動車と組んで基礎研究を開始。2023年にはトヨタの燃料電池スタックと自社製水素専用コンポーネンツを組み合わせて搭載するプロトタイプ「iX5 ハイドロジェン」を公開していた。
現在は生産された100台ものプロトタイプが世界各国を走りまわり、データを収集する実証実験が行われている。実は日本の公道でもテスト走行が重ねられており、東京都内だけでなく、水素エネルギー開発に注力する福岡県や大阪府でも実証実験を実施してきた。
2024年もこの活動は継続し、官公庁や行政機関、大学を訪問するとともに、専門家や一般からのフィードバックをドイツ本国の開発チームと共有、車両開発に反映するのだという。
数年前から加熱しはじめたEV普及の傾向も最近では落ち着きを見せ、その一方でFCEVへの期待値も高まってきている。水素を充填する時間の短さや走行可能距離の長さといった要素、そして排出ガスを出すことなく発電できることからアウトドアの相棒として、また非常用電源としての活躍も期待できるなど、欧米や中国をはじめとする国々で次世代パワートレーンの有力候補として再び注目を集めているのだ。
実際BMW iX5 ハイドロジェンは、水素タンクが空の状態から満タンまでおよそ3分程度しかかからず、満充填による航続可能距離は約504km(WLTPモード)を達成するなど、補給ポイントの課題をクリアできればガソリン車とそう変わらない使い勝手を実現できるとしている。