BYDが同社初のピックアップトラックを2024年後半に発売する。仕様などの詳細は明らかにされていないが、ピックアップ人気の高い東南アジアやオセアニアを皮切りに、まずはPHEVから投入を開始して2025年にはEVもラインナップに加えるという。(タイトル写真はBYDが発表した新型ピックアップのプロトタイプ)

タイに建設中の新工場で今秋から生産開始か

日本ではあまり見かけないピックアップトラックだが、海外では人気のカテゴリー。なかでもミッドサイズクラスは東南アジア、オセアニアで絶大な支持を集めている。たとえばタイの自動車市場では、およそ3分の1はピックアップトラックが占める。

そこでライバルを寄せ付けない存在感をみせているのが、トヨタ ハイラックス(Hilux Revo)といすゞD-MAXだ。この2車が販売台数のトップ争いを繰り広げている。またオーストラリアでは、この2車とフォード レンジャーが販売台数トップの座を競い合っている状況だ。つまり、タイでもオーストラリアでもすでにマーケットの棲み分けはほぼ出来上がっている。そこに新規参入するBYDにはどんな戦略があるのだろうか。

画像: BYDが新たな世界戦略車として2024年後半から発売する同社初ピックアップトラック。まずはPHEVから導入し、2025年にはEVも加わる。全車4輪駆動だ。(写真はプロトタイプ)

BYDが新たな世界戦略車として2024年後半から発売する同社初ピックアップトラック。まずはPHEVから導入し、2025年にはEVも加わる。全車4輪駆動だ。(写真はプロトタイプ)

まず見逃せないのは、当初より輸出前提で開発されている世界戦略車である点だ。現在、タイで建設が進む新工場は今秋より稼働開始予定だが、新型ピックアップもここで生産される。この新工場をハブとして、東南アジア、オセアニア、中東、そして南アフリカにも輸出することになるだろう(トヨタ、いすゞもタイで生産して輸出している)。中東や南アフリカも日本のピックアップトラックが大きなシェアを獲得している地域だけに、本格的な輸出が始まれば日本メーカーへの影響は少なくないと思われる。

一方で、中国国内生産とは異なるので、価格面での無理はしないと予想される。むしろ、最新テクノロジーによる先進性を前面に押し出してくるのではないだろうか。

計画では2024年秋以降にまずはPHEVバージョンを発売、追って2025年内にEVバージョンも投入する。具体的なボディサイズやパワートレーンの詳細はまだ公表されていないが、複数の中国現地メディアがPHEVは1000kmを超える航続距離を実現すると予想している。もちろん期待値である可能性はあるが、複合走行モードで三菱アウトランダーPHEVに匹敵する総合航続可能距離を重量級のピックアップで実現すれば快挙と言っていいだろう。

また、2025年に発売されるEVバージョンは高級乗用EVに勝るとも劣らない最先端のテクノロジーを搭載して、現地の富裕層をターゲットに開発されているようだ。

画像: EVバージョンにはHUAWEIによる最新の制御技術も採用されるという。富裕層向けのゴージャスなピックアップになるようだ。

EVバージョンにはHUAWEIによる最新の制御技術も採用されるという。富裕層向けのゴージャスなピックアップになるようだ。

画像: プラットフォームには「e-Platform3.0」の進化版を採用する。ブレードバッテリー(LFP電池パック)を車体構造の一部として使う「Cell to Chassis」だ。

プラットフォームには「e-Platform3.0」の進化版を採用する。ブレードバッテリー(LFP電池パック)を車体構造の一部として使う「Cell to Chassis」だ。

トヨタもいすゞも迎撃態勢を整えつつあるが…

現在、タイやオーストラリアではPHEVも含め急激な電動シフトが進んでいる。また他の東南アジア諸国でもEVへの関心は日増しに高まっている。圧倒的なシェアを誇る日本車メーカーもうかうかしてはいられない。

画像: トヨタ ハイラックスRevoのEVプロトタイプ。2025年よりタイで生産を開始する。

トヨタ ハイラックスRevoのEVプロトタイプ。2025年よりタイで生産を開始する。

画像: いすゞD-MAXのEVコンセプト。こちらも2025年よりタイで生産を開始。BYDの挑戦にどう立ち向かうか。

いすゞD-MAXのEVコンセプト。こちらも2025年よりタイで生産を開始。BYDの挑戦にどう立ち向かうか。

トヨタは去る3月26日にハイラックスRevoのEVを2025年中にタイで生産・販売することを発表、いすゞも同年中にD-MAXのEVモデルの販売をまずは欧州で開始したのちにタイでの販売も検討中している。さらにトヨタは昨年秋に開催されたジャパンモビリティショーで、次世代EVピックアップのコンセプト「EPU」も公開済みだ。BYDへの迎撃態勢を強化している。

画像: 昨秋のジャパンモビリティショーに出展されたトヨタの「EPU」。あくまでコンセプトモデルだが、モノコックボディを採用した次世代EVピックアップトラックとして開発が進んでいるようだ。

昨秋のジャパンモビリティショーに出展されたトヨタの「EPU」。あくまでコンセプトモデルだが、モノコックボディを採用した次世代EVピックアップトラックとして開発が進んでいるようだ。

とは言え、BYDの参入は半年後から。周到な戦略をたてたうえでの新規参入である。長年我が世の春を満喫してきた日本勢にとって、深刻な脅威になることは間違いないだろう。

長らく日本車が幅を利かせてきた東南アジアおよびオセアニア市場では、すでに乗用車カテゴリーで日中自動車メーカーが火花を散らしている。今後はドル箱とも言えるピックアップトラックで、両国メーカーはさらに激しい鍔迫り合いを繰り広げることになりそうだ。海外市場での戦いとは言え、日本経済と無縁ではないので、今後の動向を注視していく必要がある。

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