2023年のEV比率を56%に下方修正、プラグインHEVなどを加味
EPAのライトビークル(※2)の最終的なGHG排出基準値は、前回の2032年の新車販売に占めるEV比率が67%に達する案と比較するとEV比率が56%に下がり、前回は考慮されていなかったプラグインHEVが13%、日本メーカーが得意とするHEVやハイテクなエンジン車の比率をそれぞれ3%、20%想定するなど、多様な技術でCO2削減を達成するシナリオに変わりました。※2:総車両重量8500ポンド(3855kg)以下の自動車
一年前は、自動車メーカーのEVやバッテリー製造への巨額の投資を背景にEVシフトが直線的に進むと見ていましたが、今回のシナリオでは、2027〜2030年までのEV化のペースを緩和しています。また、消費者のEV受容度やメーカーのEV生産台数などに応じてEVの普及度(penetration)を弾力的に想定しており、2032年のEV比率も35%から60%超まで幅を持って検討しています。
それでも2032年におけるGHGの排出基準値は、乗用車とトラックを合算して85g/マイル(53g/km)と当初の数値から3g/マイル増えただけで、EPAによれば、2055年までに米国の1年間の総排出量に当たる700億トンのCO2の削減を可能にし、200億バレルの石油の消費量を削減できます。さらに、経済効果としても年間の燃料費を460億ドル、車両のメンテナンスや修理費を160億ドル削減します。800ページを超える政策文書では、メーカーの技術的コストや雇用への影響なども分析されており、2032年式モデルで製造メーカーのコストは一台につき1200ドル上昇するものの、購入したオーナーの保有コストは6000ドル下がり、自動車産業の雇用も10万人以上増えると試算しています。
EV強制でなく、テクノロジーニュートラルを強調
トランプ前大統領や共和党のタカ派議員など反対勢力が、「EVシフトは米国経済を殺す」「EVの強制」と攻撃しているのを意識してか、今回のルールは「多様な技術を想定しテクノロジーニュートラル」で、メーカーも顧客も「EV、PHEV、ハイブリッドからハイテクエンジン車まで幅広い選択肢がある」ことを強調しています。
当初案に強く反対していた自動車メーカーや主要サプライヤーで構成する米国自動車イノベーション協会(Alliance for Automotive Innovation)も今回の修正案を歓迎し、「依然としてストレッチ目標だが市場とサプライチェーンに時間的猶予を与えた」というコメントがEPAのプレスリリースにも掲載されています。また、バイデン大統領を11月の選挙で支持することを表明したUAWも、「エンジン車の生産に携わる労働者への配慮を示した」と今回の修正を評価しています。