欧州の大都市では、街の中心部の道路からクルマを減らし、歩行者や自転車に開放する動きが加速しています。今年の夏オリンピックが開催されるパリは、社会党の市長が急進的なグリーン政策を進めており、セーヌ川河畔の道路など市街地の一部を自動車通行禁止にしたり、緑地化を進めたりしています。今回話題になったのは、1.6トン以上のSUVなどの車両の公共駐車料金を3倍にする政策の住民投票で、2月4日(日)の投票の結果、投票者の過半数がこれを支持するという結果になりました。パリは昨年4月にも、レンタルキックボードの禁止について同様の住民投票を行い、その結果を踏まえて、昨年9月からレンタルキックボードが街から姿を消しました。今回のSUVの駐車料金の懲罰的値上げは、市議会で決定されれば今年9月から実施されることになります。(タイトル写真は「パリにSUVを増やす、減らす? SUVは普通の自動車より20%多く汚染します」と市内各所に掲示された投票を促すポスター。[パリ市ホームページより])

パリ市長の主張。「SUVは重く、かさ張り、汚染を撒き散らす」

パリ市によれば、過去30年でクルマの平均重量は975kgから1,233kgに250kg増えました。セダンタイプより大柄で200kgも重く、排出ガスも多いSUVタイプの車両は、対歩行者事故の死亡率も倍になり、これが市場で4割を超えていることを問題視して規制しようというものです。

フランスを代表するメディアのルモンド(Le Monde)紙も、「全世界に3億3000万台走っているSUVは、2022年だけで10億トンのCO2を排出しており、二酸化炭素削減に逆行している」というIEA(国際エネルギー機関)の報告を引用し、SUVのほとんどが都市部に住む富裕層によって所有されており、クルマはパリ市内の交通の11%に過ぎないが公共空間の50%を占有している、といった調査データをあげて投票前の記事で紹介しています。

投票にかけられた案では、車重1.6トン以上の内燃エンジン搭載車とプラグインハイブリッド車に加え、EVについても2トン以上の車両が3倍の駐車料金の対象になります。環状高速道路の内側のパリ市域のうち、中心部を含む1〜10区(ゾーン1)は、通常1時間あたり6ユーロの料金が18ユーロに、外側の11〜20区(ゾーン2)は1時間あたり4ユーロが12ユーロとなります。半日(6時間)駐車した場合は、それぞれ225ユーロと150ユーロで、市外からパリに買い物や食事などに訪れる人には大きな負担になります。

市の予測では、パリとその周辺地域を含めた「イル・ド・フランス」から平日に市内の駐車場を使用する7万台の車両のうち約10%が影響を受けるとしています。路上にある住宅用駐車場や、職人、タクシー、医療従事者、身体の不自由な人々に対しては例外的措置が取られるようです。 

画像: スペイン出身のアンヌ・イダルゴ(Anne Hidalgo)パリ市長は2014年の就任し現在2期目。2022年の仏大統領選にはミッテラン大統領やオランド大統領を出した社会党から出馬したが、得票率はわずか1.8%だった(写真はパリ市ホームページより転載)

スペイン出身のアンヌ・イダルゴ(Anne Hidalgo)パリ市長は2014年の就任し現在2期目。2022年の仏大統領選にはミッテラン大統領やオランド大統領を出した社会党から出馬したが、得票率はわずか1.8%だった(写真はパリ市ホームページより転載)

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