いまや地方だけでなく都市部でも公共交通機関の維持確保が困難になりつつある。その課題解決手段のひとつになると期待されているのが自動運転バスの活用だ。千葉県横芝光町は、2024年2月2日より自動運転バスの“通年運航”を開始。いつまでも公共交通機関確保された住みやすい街づくりと地域活性化への取り組みを加速させている。

路線バスの維持に向け自動運転バスを通年運航へ

千葉県の北東部に位置する横芝光町(よこしばひかりまち)は、九十九里浜や成田空港にも近く、千葉県内の町村では最大規模の人口を誇る。しかし近年は、地域の高齢化や若者世代の流出、公共交通機関の慢性的な運転手不足に悩んできた。すでに運転手の労働時間規制が強化される“2024年問題”を見据えた措置として町内バスを運営するほか、デマンドタクシーなどの新たな仕組みを作って住民の移動手段の確保に注力してきた。

去る2月2日、その取り組みをさらに加速させるため、横芝光町、自動運転サービスのBOLDLY(ボードリー)、京葉銀行の三者が協力。持続可能な公共交通の実現を目指した自動運転バスの通年運行を開始した。

導入された自動運転バスは、名古屋大学発のスタートアップであるティアフォーが生産する国産の自動運転バス「Minibus」。JR横芝駅〜東陽病院〜カスミ横芝光店(スーパー、ピアシティ横芝光内)を結ぶ1周約5.5kmのルートを走行する。

自動運転バスが定期運行することで、デマンドタクシーに集中していた需要を緩和し、住民が便利かつ自由に移動できる公共交通の実現を目指している。また、実績を積み重ねて知見を蓄積することで、さまざまな技術の検証・導入を進め、2025年以降に一部区間での自動運転レベル4による運航の実現を目標にしている(現状はオペレーターが同乗するレベル2で運行)。

画像: 運行ルートは1周約5.5km。3カ所のバス停が設けられる。

運行ルートは1周約5.5km。3カ所のバス停が設けられる。

全体のプロジェクト管理は、全国の自動運転バスの社会実装を実現しているBOLDLYが担当。全体統括に加え、自動走行の事前準備や BOLDLYが開発・提供する運行管理システム 「Dispatcher(ディスパッチャー)」の提供なども行う。また京葉銀行は、地域の企業と連携したプロモーション施策の企画・運営などを担当する。当面の運行概要は以下のとおり。

【運行の概要】
・運行期間:2024年2月2日(金)〜
・使用車両:自動運転小型EVバス「Minibus」(株式会社ティアフォー製)
・運行速度:35km/h以下
・乗車定員:15人(オペレーターを除く) ※立ち乗りは不可
・運行ルートおよび運行本数:東陽病院〜横芝駅前〜ピアシティ横芝光 ※1日あたり10便程度運行(下表参照)
・運賃:無料 ※だれでも乗車可能(車椅子およびベビーカーにも対応)

画像: 路線バスの維持に向け自動運転バスを通年運航へ
画像: 住民以外でも利用可能。スペック上の定員は25名だが、立ち乗りは認めていないので15名乗車となる(オペレーターを除く)。

住民以外でも利用可能。スペック上の定員は25名だが、立ち乗りは認めていないので15名乗車となる(オペレーターを除く)。

国産の自動運転バス、「Minibus」はどこまで活躍できるか

現状、国内の自動運転バス/シャトルの実証実験に用いられている車両は、ほとんどがフランスのNAVYA(ナビヤ)が製造する「ARMA(アルマ)」、あるいはエストニアのAuveTech(ウーヴテック)が手掛ける「MiCa」などが占めている。横芝光町が導入した「Minibus」は、ティアフォーが手掛ける“国産自動運転バス”であるところにも注目しておきたい。

ティアフォーは、名古屋大学の研究室から誕生したいわゆるディープテックスタートアップ企業だ。自動運転の普及を目指して、多くのモビリティ関連企業に自動運転技術およびその技術基盤を搭載した車両を提供している知る人ぞ知る企業である。

画像: 国産自動運転バス「Minibus」はティアフォーが開発し、アイサンテクノロジーが販売・技術サポートを行う。

国産自動運転バス「Minibus」はティアフォーが開発し、アイサンテクノロジーが販売・技術サポートを行う。

「Minibus」はその技術基盤を搭載した車両ラインナップのひとつ。完成車メーカーから提供されるベース車両をもとに、ステアリングやブレーキなど駆動系の電動化モジュールおよび自動運転レベル4水準の自動運転機能に対応した電気電子アーキテクチャーを搭載している。

顧客は用途・目的に応じたソフトウエアを後付けすることで、レベル4認可取得を可能とすることができる。なお、車両の販売は、高精度3次元計測器や3次元地図などアプリケーションの開発や導入支援などで数多くの自動運転実証をサポートしてきたアイサンテクノロジーが行っている。

国産の自動運転バスは「Minibus」が事実上初となる。ティアフォー/アイサンテクノロジーとも今後はその基本性能をさらに高めていくという。千葉県横芝光町での取り組みと併せて、今後は自動運転バス国産化の行方も見守っていきたい。

【Minibus 基本諸元】※アイサンテクノロジーHPより抜粋
・全長×全幅×全高:7190×2320×3050mm
・ホイールベース:4760mm
・乗車定員:25人(客席15席+運転席1席+立ち席9人=定員25名)
・最高速度:35km/h(手動時は70km/hで走行可能)
・航続距離:一充電あたり最長約150km
・最大登坂度:20%
・最小回転半径:7.9m
・充電出力(CHAdeMO):50kW
・充電時間(CHAdeMO):約2時間
・センシングディバイス:LiDAR/カメラ/RADAR
・その他装備:GNSSおよびIMU

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