フォルクスワーゲンを代表するクルマ、ゴルフが今年50周年を迎えました。そして2024年1月24日には新型が発表されています。そこで今回はゴルフという世界のベストセラーカーの歴史を振り返りつつ、昨今のフォルクスワーゲンの戦略などについても触れてみたいと思います。(タイトル写真は新型ゴルフGTEと初代〜7世代の歴代モデル)

最後の内燃エンジンゴルフになる?

2030年までに欧州の新車EV販売比率を80%にする目標を掲げるフォルクスワーゲンは、今回のアップデートが内燃車ゴルフの最終バージョンで、次期モデルは完全なBEVモデルとして2020年代末までに登場する計画と伝えられていました。

ところが、これに少し「?」を投げかけたのが、先週の新型「マカン」の発表会でのポルシェCFO(最高財務責任者)の発言で、「2035年で内燃車販売終了については、色々議論がされている。延期があるかもしれない」と述べたと報道されました。この「議論」がVWグループ内での話なのか、ドイツ政府や欧州委員会を含めた話なのかは不明ですが、欧州でもEV販売の減速が憂慮されているだけに気になる発言です。「プレミアムEVは補助金がなくても売れるが、大衆EVには必要」ともコメントしたようで、これは昨年12月に補助金を打ち切ったドイツ政府への牽制なのかもしれません。

ポルシェはチリでカーボンニュートラルな合成燃料「e-fuel」の生産に着手しており、昨年3月に2035年以降もe-fuelの内燃車は認めるようにドイツ政府を通してEUに働きかけてこれが土壇場で認められた経緯があります。日本でも豊田章男トヨタ自動車会長が、1月の東京オートサロンで「2つの新しいエンジンの開発をトヨタ経営陣にお願いした」と発言していますが、欧米の自動車メーカーも内燃車の寿命はもう少し長いと考え始めているのかもしれません。

ゴルフ発売50周年冊子。初代誕生時の秘話も公開

さて、冒頭のゴルフに話を戻しますが、今年は世界で累計3700万台以上を販売したゴルフの発売50周年にあたり、フォルクスワーゲンは本社のヴォルフスブルグで記念のイベントも開催するようです。50周年の記念冊子も制作されており、1974年の初代ゴルフ発売から8世代目までの軌跡が紹介されています。

初代ゴルフのデザイナーであるイタルデザイン創始者のジョルジェット・ジウジアーロ氏のインタビューも掲載されていますが、フォルクスワーゲンがこの20世紀最高のカーデザイナーにデザインを委嘱する前に、ポルシェとVW本社とアウディの3箇所で偉大なる「ビートル」の後継車のスタディモデルを製作していた事実が興味を引きます。

ポルシェは、リヤシートの下に水冷エンジンを搭載したミッドシップモデルを提案。一方、ヴォルフスブルグ本社は、フロントエンジン/フロントドライブ(FF)の斬新なレイアウトのハッチバックを試作するも、エンジンはビートルの空冷水平対向4気筒の案。最も先進的なレイアウトを提示したのがアウディ50や80を設計していたインゴルシュタット(アウディ)で、FFレイアウトで水冷4気筒OHCエンジンを推していました。内部での検討の結果アウディ案を採用することになり、そのデザインを当時カロッツエリアのギアを離れ、自身でイタルデザインを設立したばかりのジウジアーロ氏に白羽の矢が立ったわけです。

画像: 初代ゴルフとVW本社のスタディモデルEA276(右)。大きなリヤハッチを持つファストバックスタイルは当時としては斬新。この2台は2月2日からドイツブレーメンで開かれるモーターショーで展示される。

初代ゴルフとVW本社のスタディモデルEA276(右)。大きなリヤハッチを持つファストバックスタイルは当時としては斬新。この2台は2月2日からドイツブレーメンで開かれるモーターショーで展示される。

画像: ポルシェ案のミッドシップのEA266。スポーティなハンドリングと最高速187km/hの性能を誇り50台が試作されたが、「国民車」の後継としてはメンテナンス性などに難があった。

ポルシェ案のミッドシップのEA266。スポーティなハンドリングと最高速187km/hの性能を誇り50台が試作されたが、「国民車」の後継としてはメンテナンス性などに難があった。

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